教育福島0112号(1986年(S61)07月)-008page
特集〔1〕 生涯教育の推進・充実
在学青少年の社会参加活動
は じ め に
人は、社会生活を通して人間となると言われています。
確かに、人間は生まれた時から死を迎える瞬間まで、人々との交りの中で、社会の一員として生きています。社会生活を営む最も基本的な単位は家庭です。
生まれて間もないころは、両親はじめ、家族の愛情と庇護の中で大きくなります。そして、成長とともに、近隣の仲間との遊びや学校での集団生活を通して、周囲の人々の愛情を受けながら人間的に成長します。
やがて、子どもたちは、人間としてよりょく生きていくために、さまざまな組織や集団を形成した青少年団体や各種グループで、その中の一員として活動し、行動することを通して、生活上必要なことを身につけていきます。
したがって、人間は、好むと好まざるとにかかわらず社会的関係を維持して生きなくてはなりません。その意味では、自動的に社会参加をしているといえます。
しかし、今日、人間同士のかかわり方や社会とのかかわり方に変化がみられ、新たな視点から青少年の社会参加活動のあり方が問われています。
そこで、最近、県内のいくつかの市町村で調査した「在学青少年の意識に関する実態」の資料と、青少年問題審議会意見具申(昭和五十四年)「青少年と社会参加」社会教育審議会答申
(昭和五十六年)「青少年の徳性と社会教育」を参考とし、生涯教育の視点から青少年の社会参加活動のあり方を考えてみたいと思います。
一、社会参加の意義
(一) 今、なぜ社会参加なのか
総理府は、全国の十五歳以上の男女三千人を対象に、昨年十一月に実施した「青少年の社会参加に関する世論調査」の結果について発表しました。
それによりますと、地域や福祉活動などの社会参加活動に関心を持つ人は五十五%と半数を超えています。ただ社会参加の実際の体験では、「参加したことがある」は二十七%と低く、関心と行動に大きな差がみられます。
また、社会参加は、青少年の自己訓練や人格形成のために、重要だという考えについて「そう思う」は八十三%と十人のうち八人が社会参加の意義を認めています。また今後、重要だと思う社会参加の分野は、表1のようになっています。
調査の結果では
1) 欧米に比べ社会的意識はまだ低い
2) 日本人全体が忙し過ぎると分析し、今後、学校教育などで、社会参加活動を積極的に浸透させていく必要があるとしています。
ところで、一九八○年代は、「心の時代」と言われています。六〇年代は、「物の時代」で、物さえ豊かになれば人間は幸福になれると考えられていました。しかし、物が豊かになった今では、自分のことしか考えないで、他人のことはどうなってもかまわないという時代となり、地域の住民としての社会参加や役割分担を果たすという習慣が少なくなる傾向にあります。
心が豊かになることは、人と人とのかかわりが育つこと、人に対する思いやりが育つこと、他人の立場に立って考えることができるようになることであり、地域社会とのかかわりの心が育つことでもあります。特に、明日を担う子どもたちにとっては、社会の一員
表1 青少年の社会参加活動分野(総理府世論調査)