教育福島0112号(1986年(S61)07月)-009page

[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

として、生きていく力が育っているか、いないかということが、大事なことであります。

また、八十年代は、「地域社会の時代」であるとも言われています。自分たちの住んでいる地域社会とのかかわりを基本から考え直してみないと、人間として生きていけない時代になってしまう恐れがあります。

今、わたくしたちは、住んでいる地域社会をもう一度見直し、人間関係をはぐくむために、それぞれの個人、個人がどういう生き方をし、どういう社会を創るかということを真剣に考えなければなりません。

二十一世紀を担うのは、今の青少年です。社会参加の問題をどういう視点からとらえねばならないかを、真剣に検討する必要があります。

それは、青少年が主体者となり、自らの意思で、社会のさまざまな活動に参加し、社会そのものを変えていくという考え方が大切であるからです。

 

(二) 生涯学習の視点

 

青少年の教育を考える時長い人生全体の中で、人間として、どう育ち、どう幸福になっていくかを前提としなければなりません。

それは、発達段階における課題を、それぞれの年代でしっかりとらえ、学習することによって、身につけていくという教育の必要性を意味しています。

例えば、子どものときから、地域社会の一員として、なんらかの役割を担い、「あなたも、この地域社会を構成している一人です」また、「あなたは、今、さまざまな人々の支えやかかわりがあって生活しているのです」ということを、社会参加活動の体験を通して身につけることが大切です。

また、このようなプログラムが家庭、学校、地域社会の中で用意されていなければなりません。

社会参加は、単に、子ども会活動や青少年団体に参加させたり、学校の中で、どんな部、クラブ活動に所属させるかということだけではありません。もっと原点から見つめ直して、今、なぜ要請されるようになってきたのか、これから十年、二十年と過ごしていく中で、子どもたちをどのような人間に育てたらいいのか、そして、子どもたちが育っていく地域社会を、どのように育てたらよいのかを考えながら進めることが必要となってきます。

 

(三) 社会参加意識のステップ

 

青少年の社会参加ということは、青少年自身が、自ら進んで役割を分担し、その集団や社会を自分たちのものと認め、新たな社会を創造していく過程であるといえます。その意識形成の過程を示すと、次のとおりになります。

 

する」ことです。しかし、このことは、そこに「いる」ことにしか過ぎません。

 

第一は、地域にあるさまざまな青少年団体やグループ・サークル、ジュニアリーダーの組織などに「所属する」ことです。しかし、このことは、そこに「いる」ことにしか過ぎません。

第二は、所属した集団や組織に対して「わたしは、この集団の構成員の一人です」と、ある種の帰属意識をもつようになることです。このような意識をもつことは、集団とのかかわりをもつようになったことで、集団を自分の「ものにした」ことになります。

第三は、その集団の中で、自分の立場を認識し、集団の一員として進んで分担した「役割を果たす」活動に参加することです。成員とともに力を合わせて活動することによって、連帯の必要性を感じるようになります。

ここで「参加」という本来の意味に近づくことになります。

第四は、所属している集団や組織の中だけで活動するのにどどまらず、広い視野と意欲をもって集団のわくを越え、広く社会に「かかわって」いくことです。

自発的意思によって、所属集団の他の成員と自己との支え合い、助け合いを通して、所属集団を超えた人間相互の依存と協力の関係を認識し、積極的に社会にかかわれるようになることが、まさに参加することです。

第五は、行動を自主的に選択し、社会にかかわっていくことだけではなく、自己を社会にかかわらせていく過程で、利己を超えた「利他」「奉仕」の精神が芽生えたとき、参加はより深まったと言えるわけです。

そして、自分が社会によって、人によって生かされていることを知ったとき、初めて社会の中で自分を生かすことができます。「他のために」新しい社会を創造していく気持ちになることは、社会参加の最も基本的な要件です。

 

四 社会参加の領域と意味

 

(一) 家庭における参加

 

子どもの社会参加は、まず、家庭から始まります。家庭は、人間にとって最も基本的な生活の場であり、家族が情緒的な強い結びつきを持ち、それぞれの家庭独自の家族関係を形成していくところです。

また、同時に、親を通して持ち込まれるいろいろな社会集団について、多くのことを学びとる場でもあるわけで

 

 

 


[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

掲載情報の著作権は情報提供者及び福島県教育委員会に帰属します。