教育福島0112号(1986年(S61)07月)-029page

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剣 道

吉井明生

 

るということは、部員全員の優勝なのだ」と生徒たちに言い聞かせている。

 

「面ありっ。勝負ありっ」またつらい季節がやってきた。伊南中学校剣道部では、毎年五月になると、一年生から一二年生まで全員参加のリーグ戦が行われる。試合は二週間にわたって、男子は一人あたり二十五試合を消化、上位七名がレギュラー候補となる。選手になれるのは五人に一人である。誰もが選手となるチャンスを持つが、同時に三年生でも選手になれない者がでてくる。後輩に負けようものなら、あの大きな体を震わせ、汗でぐっしょりになった面に顔をうずめて泣くのである。勝負の世界はいつでも厳しいが、声を殺して泣く姿を見ると、胸がつまってくる。つらいのはこれだけではない。これだけ試合をしても、一勝もできない生徒がでてくる。総試合数三百六十一の結果は、強い者をはっきりさせるが、弱い者をもはっきりさせる。これらの生徒をどのように育てるかということは、大会で勝つこと以上に大切だと考えている。人数制限のない大会には全員を出場させるが、「補欠だって立派な選手なのだ。全体が強くならなければレギュラーは強くならない。逆にいえば、チームが優勝するということは、部員全員の優勝なのだ」と生徒たちに言い聞かせている。

それにつけてもレギュラーへのプレッシャーは大きい。今までの実績を自分たちの代で落としてはいけないと考えている。周囲の期待もかなりのものである。大会ごと、ほとんどの選手の父兄が応援にかけつける。また、村や同僚の先生方の協力も大きい。一回戦で負けたりしたら、頭をまるめようかなどと、私自身本気で考えることがある。「精一杯がんばればそれでいい。力を尽くすことが大切だ」と生徒には話すが、正直のところ「頼むから勝ってくれ」と心の中ではいつでも思っている。残りあと十試合というときである。突然M男が甲手を床にたたきつけた。試合でM男は、入っていないと思ったコテをとられ、自分としては納得のいかない判定で負けたからである。試合はそっちのけで指導が始まる。礼に始まり礼に終わる剣道では、絶対に許されないことだからである。生徒の気持ちもわからないではない。一生懸命にやっているから、なおさらくやしくてたまらないのだろう。しかし、審判だって人間であり、公正に見ようと努力しているのだ。間違いを「間違っている」と言うことは大切だが、それとこれとは違う。怒りを表現することは、ある面では人間らしいかも知れないがそれを抑えることも人間にしかできないことではないか。等々。

相手の尊重や規則の遵守、公正さなどが剣道の教育的効果だと言われているが、「このように忍の心や悲喜こもごもの体験を経て、少しずつ成長するんだなあ。部活動って難しいなあ」と、つくづく考えさせられる昨今である。 (伊南村立伊南中学校教諭)

 

全校生による剣道のリーグ戦

全校生による剣道のリーグ戦

 

〈昭和六十一年度〉

就学義務猶予免除者の中学校卒業程度認定試験のお知らせ

 

この認定試験は、病気などのやむを得ない事由のために、義務教育諸学校に就学することができないで、就学を猶予又は免除された人に対し中学校卒業程度の学力があるかどうかを認定するために国が行う試験です。この試験に合格すると高等学校の入学資格が与えられます。

 

〈受験資格〉

・就学義務猶予免除者である者又は就学義務猶予免除者であった者で、昭和六十二年三月三十一日までに満十五歳以上になる者

・尋常小学校又は国民学校に就学義務猶予免除された者

・就学義務猶予免除を受けず、かっ、義務教育諸学校を卒業することができなかった者で、就学義務猶予免除をうけることができる事由に相当する事由があったと文部大臣が認めた者

 

〈試験期日〉 昭和六十一年十一月七日掛

 

〈試験場〉 福島県教育庁会議室 (福島市杉妻町二−十六)

 

〈願書の受付期間〉

昭和六十一年八月十一日則−同年九日十日加まで

 

〈受付の手続き〉

受験案内並びに出願用紙は、六月下旬から配布しますので、六十円切手をはった返信用封筒を添えて左記まで申し込んで下さい。

〒九六〇 福島市杉妻町二−十六

福島県教育庁高等学校教育課

中学校卒業程度認定試験係

(電)〇二四五・二一・一一一一(内線三九三六)

 

 

 


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