教育福島0113号(1986年(S61)08月)-030page
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学級経営に思う
佐藤碩芳
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望ましい基本的生活習慣の形成にあたっては、教師の価値観のみに基づいて指導をすすめることは、今日大変難しい状況になっているといえる。
本来、「服装」や「あいさつ」は、学校の指導よりも家庭のしつけのように思われるが、家庭で生活する時間よりも学校で生活する時間の方が長い現在、しつけは、家庭ですべきであるといって家庭におしつけられなくなってきた。学校としても、このしつけに家庭と協力しあいながら取り組まなければならないのが現状である。
今の生徒に明るさがないといわれるのは、「服装のみだれ」であり、「あいさつのできない生徒」の増加を指しているのではないだろうか。
服装のみだれは、生活のみだれとか心のみだれを表すといわれ、また、あいさつのできない原因は、人間関係のまずさであり、心のみだれであるといわれている。この「服装」や「あいさつ」は、ともに人間としてもっている心の形が、日常の生活の中にあらわれるものであるため、非社会的問題生徒の早期発見のチェックリストとしてとらえ、この現象でおもわしくない形があらわれてくると、親も教師も、この問題だけに目を向け、取り締り的な指導をしたり、強要指導をしたりする。この方法では、効果はあげにくいものである。特に思春期に入り「嵐と混乱の時代」とも、「第二の誕生期」ともいわれているこの最も大切な時期に、反発のみが残ってしまうことが多い。しかし、この時期に、しつけとしての社会生活習慣を身につけさせることは人格形成の上で最も重要な時期でもある。その発達課題を実現させる場が学級である。学級は、集団の一員として、互いに影響しあいながら成長していく場ではないだろうか。そこで私は、概念や口さきだけの指導でなく、日常生活に結びつけた係活動を通し、自分たちの生活をみつめ、改善しようと努める生徒の育成をめざして学級経営をすすめた。
クラスの生活班即係班とし、六つの係班をつくり、それぞれ具体的な活動計画を作成し活動する体制をつくってきた。服装の指導は、規律班の係活動として点検をし、それを評価し、改善を呼びかけてきた。教師は、なぜ服装が集団生活の中で問題になるのかを個別的全体的に指導をするとともに保護者の協力も得た。違反服をその場でとりあげても解決にはならない。生徒の不満だけが残る。ズボン違反や白エナメルのベルトがなくなっただけでも指導の効果が出たものとし、生徒の心の変化を評価し、相互に無理のない指導をすすめていくように心がけている。
あいさつは、言葉があってはじめて感情が相手に伝えられるものであって言葉のないあいさつは形だけのあいさっと思う。本校では、週番活動の一つとして「あいさつの呼びかけ運動」を進めている。それは各学級の週番が毎朝、学年の教師とともに、登校する生徒一人一人とあいさつをかわすことである。この運動の成果は大いにあらわれ、教師に対してのみでなく、地域でも中学生があいさつをかわす、ということが地域懇談会で話題にのぼるようになってきた。
基本的な行動様式を身につけさせるには、まず、親や教師が範を示さなければ生徒は動かない。口先だけの指導では、口先だけの行動となる。「服装やあいさつ」にしても大人が範を示すことによってはじめて効果があらわれてくる。学級担任教師の態度やものの見方・考え方は生徒に大きな影響を与えることを考えると、ことばよりも行為で範を示すことのできる教師をめざして学級経営にあたりたい。
(矢祭町立矢祭中学校教諭)
〈指導資料〉
特別活動指導の実際
−−学級指導編−−発行
義務教育課では学級指導を中心とした指導資料「特別活動指導の実際」を作成しました。
本書は、既刊の「新版特別活動指導の手引」の続編として「特別活動指導の実際」を三年計画で刊行する第一年次の「学級指導編」であり、具体的事例を中心に編集してあります。
学級指導を効果的に展開するためには、学級指導の意義や目標を正しく理解して、特質を踏まえた指導計画を立て実践に結びつく指導方法を工夫していく必要があります。そのため本書では、学級指導の実際として、適応、保健、安全、学校給食、学校図書館、道徳性、学校行事等の小学校学級指導の具体的展開例や、中学校では、個人及び集団の一員としての在り方や学業生活の充実及び進路の適切な選択に関する指導が具体的事例で紹介されています。
本書の積極的な活用をおすすめします。
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