教育福島0115号(1986年(S61)10月)-013page
てきます。
フロアにはもう一つ「海のなりわい」があります。請戸浜で造られた伝馬船に、漁具一式を添えた帆かけ船です。この向かいには山村の生業用具を展示しています。産業は紙すきに代表させ、梁川町白根の資料約五十点を展示しています。これは、一戸で用いた紙すき全工程に要する一括資料で、極めて価値が高いものです。
オ 近・現代は、奥羽越列藩同盟の拠点会津において、新政府軍と総力で激突する戊辰戦争ではじまります。日本史の舞台も登場人物も本県と本県人です。薩長連合に対する抵抗は自由民権運動へ連続します。フロアにはアームストロング砲の複製があります。佐賀藩がいち早く設立した反射炉で国産に成功し、上野彰義隊との戦いで実戦に用い、転じて小田山から鶴が城を砲撃した砲です。国内はもとより、英国にも遺存しない大砲を、図・絵をもとにして研究者の協力で、苦心の末に旧姿をよみがえらせた意義は大きいものです。これと隣合せに大川発電所の四トンに及ぶ水車があります。本県が常に資源供給圏であったことの象徴です。文明開花は郵便局の窓口で代表されます。ここには、山都町に遺存した郵便制度発足当時の木製投函箱があります。 「安積開拓事業」は学術調査に基づき、安積疎水路と開拓の経過を地形模型化し、ボタン操作で開拓の進展を理解できます。「日本の花形産業」では、最初の力織機である二陛堂式を改良して量産した大橋式織機を展示します。織りかけの糸をかけた状態にし、我国で最も細い糸を織った名機であることを示しています。戦前・戦中の庶民の生活の次に「戦後の社会」があります。ここでは、高度経済成長以前の生活を如実に語る自給自足の用具を展示しています。生活物資が極限まで不足した時期の人々の生きるための英知を、後世に伝えようとの意図です。エネルギー源は木炭でありました。年間四十万俵を生産した川内村の、大竹式黒炭窯の講習会を背景に、大竹式炭窯の模型を展示しています。このまわりには、油・醤油・味噌をはじめ自給のための生産用具を配しています。自給の工夫の極致は木炭バスです。昭和十三年製のA型で、福浪線国鉄バスにガス発生炉を登載しています。写真と国鉄自動車部OBの座談会を重ねたうえでのデータをもとに製作しました。再生されたA型バスは、他には存在しません。これに乗る人形の着る国民服は桑の皮の繊維製です。これも現存唯一とみられるものです。最後の「変わりゆく社会」は映像で、高度経済成長で得たものと失ったものを対比し、村おこし運動でしめています。村おこしは、終りのないものであり、運動の過程が目的であることを示唆しています。
鶴ヶ城を砲撃したアームストロング砲(模型)
工夫の極致といわれる木炭バス
近代日本を支えた採炭用具
民俗部門展示の歳ノ神
力 自然と人間では、フロアに磐梯山