教育福島0115号(1986年(S61)10月)-016page

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竹カゴ作りなどを実演したり、入館者が参加したりすることができます。「触れる」では、主にレプリカ・標本の他、実物も準備して自由に手に取ることができます。高さ一・一メートルの興福寺の仏頭は注目されるレプリカです。「むかしの灯り」は、ろうそく・あんどん.ランプ・燭台などの明るさを体験できます。

体験学習室は無料で利用でき、コンパニオンと学芸員が対応します。手に持ち、身に付け、動くことで、歴史を身近に感じとり、新たな発見ができることをねらっています。

以上は、総合展示・企画展示の概要ですが、展示室以外にも展示があります。シンボル展示・ガイダンス展示・導入展示・ロビー展示です。

 

手で触れることができる興福寺仏頭

手で触れることができる興福寺仏頭

 

シンボル展示は四百六十平方メートル、天井高十四メートルの広大な空間構成にインパクトを与え、大空間の中で人々に寄りつきの要素を提供するため、開放性と参加性の象徴ともいうべき「二本松提燈祭りの屋台」を製作して展示しています。

 

ガイダンス展示は、エントランス・ホールに入るとすぐの位置にある総合案内と十六面マルチスクリーンです。これでは、三地域から成る本県の地理的・風土的位置づけを紹介し、観覧に必要な予備知識を提供しています。テーマは「福島の四季」で、美しく迫力のある画面で入館者に迫ります。

 

導入展示は、展示ロビーと展示室をつなぐ「心がまえ」の空間を、双葉町の史跡清戸迫横穴の壁画を複製してトンネル奥壁にセットし、原始の展示室にスムーズにいざなう仕組みです。

 

ロビー展示は、総合展示室を出た位置にある国宝白水阿弥陀堂の五分の一の模型です。方三・六メートルの規模で、内部も詳細に表現し、本尊阿弥陀如来像もあります。この堂の周りをめぐりながら観覧後の余韻を味わい、部門展示へと足を運ぶことになります。手で触れることができる興福寺仏頭

 

三、開館記念展

 

三、開館記念展

 

《武家の文化》展

 

県立博物館では、オープンの十月十八日より十一月十六日までの約一か月間、開館記念展「武家の文化」が開かれます。これは鼎立博物館の第一回企画展として先に紹介した常設展示室とは別に、企画展示室において催されるものです。

この展覧会は、近世県内に置かれていた諸藩、諸大名に関わる品々、例えば甲冑や馬具、日用の調度品、あるいは絵画や書籍等で歴史上、美術史上代表的なものを県の内外から選りすぐり一堂に展示し、華やかでまた厳しくもある武家の文化を鑑賞しようとするものです。

今回はもと若松城にあり、現在は神戸と東京の二か所に分蔵されている《泰西王侯騎馬図屏風》が、故郷とも言える会津において並べて展示される他、松平定信の命で谷文星が描いた江戸時代写生画の傑作《公余探勝図巻》も出品されます。重要文化財の里帰りも楽しみのひとつといえます。

また十月二十五日(土)にはこの展覧会にちなんでの講演会が県立博物館講堂において開かれます。講師はお茶の水女子大学教授の坂本満氏(西洋美術史一で、泰西王侯騎馬図を中心とした初期洋風画についての講演です。

それでは展覧会の中から話題の展示品のいくつかを紹介します。

 

(一) 故郷で再会する二つの泰西王侯騎馬図

 

この展覧会の中心は、もと若松城にあり、戊辰戦争による落城後流出していた二つの《泰西王侯騎馬図庭風》が同時展観されることです。

泰西王侯騎馬図は、わが国で十六世紀後半から十七世紀にかけて描かれたいわゆる初期洋風画の代表作です。初期洋風画はイエズス会の日本への布教活動の中で行なわれた西洋の絵画教育によって生まれた一連の作品であり、西洋の図像を描くことはもちろん、その表現においても西洋の技法を用いています。

泰西王侯騎馬図は八人の西洋騎士の姿が、金地に日本画の顔料という、伝統的な手段をもって描かれていますが、色による陰影や中間的な背景を省いて遠景のみを表わす点などに当時の西洋絵画の表現方法がみられます。この絵の原図になったのは一六〇七年〜一六一九年アムステルダムで刊行されたプラウ編世界図上辺に添えられた小さな銅版画だと考えられています。しかしわずか数センチ大の銅版画からこの作品のような大画面に引き伸ばした作者の力量は特筆すべきで、他の初期洋風画の作品中にもこれ程の大画面いっ

 

 

 


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