教育福島0115号(1986年(S61)10月)-026page

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がら毎時間の授業や課外活動を大事にしていきたい。

これは、私が教職一年目に、ある広報誌に載せていただいた文章の一部である。二児の父親となった今も、この考えに変わりはない。ごくあたりまえのことだが、学校や教師は子どものためにあり、その子どもの背後には、わが子に対するあつい願いがあることを、理解しなければならないと考えているからである。もちろん、この考えは、親に迎合するということではない。かけがえのない一人一人の命を大事にするということを教育の営みの基調としたいのである。

親は、常々、我が子の将来を案じ、健康で幸福な人生を歩んでほしいと願うものである。

今朝も、さわやかな秋風を全身に受けながら机に向かっていると、A男の母から電話をいただいた。

「少し熱があるみたいで、朝からぐずぐずしてんです。男らしくもっとシャキッとしてほしいんですけど……(中略)……きょうの午後の体育は様子を見て休ませてくなんしょ」

という内容のものである。このように、電話や手紙をいただく時は、むしろ、安心していられる。朝の児童の観察が容易になるからである。

しかし、遠慮や多忙さなどによって、学校への連絡を控える場合も少なくない。このことからも、 「この子の親であったら……」と、親が子を思う気持ちで、謙虚に、一人一人の子どもに接したいと思うのである。

 

ここ久保田の里は、自然に恵まれ、人情味あふれる土地柄である。私が教職一、二年目にお世話いただいた「いわき市荷路夫地区」との類似点が多い。どちらも「ここは、あなたの生まれたふるさと」と言われても自然とうなずけるのどかさがある。峠からは、清い流れ、細い街道、狭長な田園風景が見える。このような土地柄だからこそ、親が我が子へ寄せる期待も大きく、地域が学校教育へ寄せる期待も大きいのだろう。

ふと、見上げると、A男が職員室の中をのぞき込むようにしてにこにこしている。私が笑顔を返してやると、

「教頭先生、思いっきりサッカーやつて、いっぱい汗かいてから、みんなでプールに入りましょう」

A男のまわりには、B男も、C子もいた。私は、今朝の電話を思い起こして、ほっとし、元気に返事をして外に出た。

私は、「子どもたちには、より確かで、より豊かな、あらゆる力を」という学校長のお考えと親の気持ちとを受けとめながら、子どもと共に汗して、涙し、心の底から喜び合える楽しい学校づくりを進めたいと願うこのごろである。

(柳津町立久保田小学校教頭)

 

ニュータイプ

獨鈷 育

 

し、本当に今の子どもは、「宇宙人」と呼ぶほどに不可解な存在なのだろうか。

 

「今の子どもは、何を考えているのかさっぱりわからない」「新人類」「ニュータイプ、宇宙人」などという言葉をよく耳にする。確かに、彼らの物の見かたや行動、興味をもつ対象や方向に首をかしげたくなることがしばしばある。しかし、本当に今の子どもは、「宇宙人」と呼ぶほどに不可解な存在なのだろうか。

こんな疑問を抱きつつ、新採用教員として忙しい一学期を五里霧中で過ごしてきた。そこで、夏休みに入りこの疑問に自分なりの答えをだしてみようと考えた。

親たちの共働き、放任主義のため正しい朕を受けそこなった。情報を処理する能力が育っていないところにテレビや雑誌から過剰な情報がとびこみ、それらに振りまわされる。対人交渉は苦手なのに、温かい人間関係をなによりも求めている。こうした姿が今の子どもたちの一般的な姿で、一時代前より遥かに生活しにくい状況にあると言える。しかし、こうした環境を作り、子どもを放置しているのは、親や私たち教師であり、彼を指して「わからない。新人類」などと呼ぶのは、あまりに身勝手で無責任な考え方ではないだろうか。

こうした視点に立って考えるとき、この子どもたちと学校生活をともにする教師にも、新しい型(ニュータイプ)が必要になってきたのではないかと思う。

 

それでは、今改めて必要とされるタイプとはどんなタイプなのかを、私自身の目指すべき理想の教師像も含めて思いつくままに述べてみたい。

まず、教師自身の立場や名誉よりも生徒のことを第一に考える人であること。生徒がこれからの人生を送っていく上で、今やっておかなくてはならないことを的確に指導できること。「だめだからだめなんだ」などと妙な理論で頭ごなしに怒り、なぜ悪いのかを説明しないのではなく、なぜ規則が生まれ、守ればどんな効果があるのかを説明し生徒を納得させた上で反省を促す人であること。激しく叱る際にも、必ず生徒に対する愛情を持っていること、どんな叱りかたでも、そこに温かなはげましと愛情がなければ、教育効果は望めないと思う。また、そのためには、教師が生徒や地域社会から信頼を得ら

 

 

 


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