教育福島0115号(1986年(S61)10月)-027page
れる、言動に筋の通った人間であることが大事だと思う。
以上のような資質が、ニュータイプの教師に必要だと思う。
私自身まだ教員生活を始めたばかりで、この目標に到達できるのはどれだけ先かわからない。しかし、諦めることなく物事をしっかりと見据え、先輩の先生方のご指導を仰ぎながら、一歩一歩信頼のされる教師へと前進していきたい。
(いわき市立赤井中学校教諭)
ひととき
長沼 格
いつも助手席をとられてしょげがちな小学五年の娘が、ほころんだ愛矯をいっぱいにふりまいて、有頂天になってはしゃいでいる。それをいっそう煽るかのように冗談をさかんにとばす息子の陽気なしぐさ。珍しく兄貴面を後部座席で示す中学二年らしい心のゆとり。間に入った家内の顔にもいつしか笑みが生まれる。何年ぶりだろう。こんなにくつろいだ明るいひとときは。しかも、わずか五分間のドライブ、川原での煮炊きのあとの。
夏休みに入ると、一つ楽しい家族旅行をと、相談をもちかけるやいなや、「どうせ、お父さんなんかあてになら、ないんだから」と鼻息荒く一けりされる。それには負けじと勇み寄れば、子どもたちに「約束守ったことある」とたたみかけられ、返答の一言もない。
「わが家の父親は、いてもいなくても同じ、空気みたいなもの」と、いつもぼやかれる。そのたびごとに、「そんじゃって……」と口には出すが、心の中では、「本当にすまない」と、後になってしみじみと思う。良き先輩の先生方から、「家族を大事にしろよ」といつも言い聞かされる。そのたびに「はい」と、わかったように返事を返す。
今年の夏は、最高の勤務地、檜枝岐。これが、また最良の避暑地ならんと、願う私の気持ちが天に届いたのだろうか。この夏に、暑さをおして他の地に出かけようとする望みが薄く、当地の近くで焼肉をしょうという娘の提案でまとまった。大蔵大臣の乗り気の顔をうかがって、準備万端整えて心迷わずハンドルを握った次第。
家内が料理しやすいように、息子とかまど作り、娘は持ってきたトマトやジュースを冷やす係り。パチパチと炎が食欲をくすぐる。もう、なんとも言えない川原での箸のつつき合い。
病身の娘は、せせらぎにつき出た岩にまたがって得意顔で肉をほおばる。いつもは少食の息子も清流の石に尻をおき、両足を冷やしながら、これまた大口でパクついている。「もう腹いっぱいで食えないよ。そんなに焼いて誰が食うの」をよそ目に、「私なんか、まだ食べてないの」と煙を立てる家内の食欲も未だかつて見たことがない。・箸の後は、小石を手にする。水の面に平たい石を滑らすように投げ合う。ここにきて初めて、父親の力が誇示できた感がある。巴御前もさすがに兜をぬいで私に花をもたせる。息子も親父にはかなわないと降参する。
「おまえも、お父さんみたいにすぐなれるよ」と励ましのかげにちょっぴりと威厳を保ったひとときであった。
ささやかで、しかも、短いひとときであったが、心から笑い合い、気持ちの許し合える最良のときであったように思う。
二人の子どもたちの言葉を借りれば、「よかったね。お父さん、近いうにまたやろう」……。
(檜枝岐村立檜枝岐小学校教頭)
一家だんらんの楽しい「ひととき」を過す
手造りのプレゼント
河野 功
「先生、いま何か切ってんのかい」
久し振りに拙宅を訪れてくれたM君の問いである。彼はA養護学校を卒業した後、郡山市内の某中小企業で働く勤労青年である。
A養護学校在学中、クラブ活動で切