教育福島0115号(1986年(S61)10月)-030page
菊作りは落葉集めやごろ土集め、そして肥料作りと苦心も多いのです。しかし、なにかと気忙しく、雑事に振り回されることの多い昨今 静かに自分の手で一本一本丹念に苦心して育てた菊が、見事な花を咲かせたのを眺めるとき、心に安穏を与え、明日への英気を養う心の古里として心をなごませてくれます。でも、私たち菊作りの喜びは、開花した時だけの喜びだけではありません。むしろ、小さな苗が日一日と順調に遇しく成長して行く姿を見ることの方が感激も多く、夢もふくらみます。ちょうど子どもたちが期待にこたえて成長して行くのをみつめることが、教師にとって最高の喜びであることと同じなのです。「花は育てる人にこたえて咲く」と言われます。手を掛ければ掛けるほど、それを育てた人の深い思いにこたえて美しく咲いてくれますが、少しでもほうっておくと病気にかかったり、すねてヘソを曲げ、よからぬ所に醜い花を咲かせ、庭の片隅で首を垂れて寂しく咲いてしまうのです。
このように、菊作りは人づくり教育と同じように、ほんの少しの気配りと愛情により満身に笑みを漂わせ、強く大きくほれぼれするような美しさでこたえてくれます。栽培途中で、三本仕立ての一本が不用意に折れて胆をつぶすことも多々あるのですが、他の二本と同じ高さで胴切りし、秋の気配が漂う中で見事な花を咲かせ菊花展で入賞した時など、愛情にこたえてくれた大輪の花に「よくぞ咲いてくれた」と感謝の気持ちでいっぱいになったものです。
人づくり教育においても、意志が弱く、度重なる注意にもかかわらず、途中で挫折してしまう生徒もいますが、こうした生徒にこそ深い愛情と誠意を尽した指導により、心の目が必ず開かれるものと信じてます。心の目が開かれるのは、順調な時ではなく、むしろ逆境の中で開けることが多いと思います。
先日、在学中何かと問題行動が多く、絶えず私たちを悩まし、何とか卒業した生徒を、彼女が勤務するデパートに立ち寄りました。「先生、私を観察に来たのでしょう」「私はもう大丈夫です。高校時代の私と違うんですから」「立派な大人に成長したでしょう」とこぼれるような笑顔でこたえてくれた彼女の表情からは、数年前の暗さは消えうせ、今は理解ある夫のもとで、二人の子供を育てる立派な母親として家庭を支えています。
これからも、希望と夢にふくらんだ芽ばえに、恵まれた環境の中で他人への思いやりと、優しい心遺いをもった生徒を育てていきたい。そう願いながら今日も菊の苗に水をやるのです。
(県立喜多方女子高等学校教諭)
61年度版学校統計要覧の刊行について
例年8月末に刊行されております「学校統計要覧」は、文部省が毎年5月1日現在で実施している「学校基本調査」のなかから、学校に関する基本的事項を抽出集録したものです。
内容としては、県内の国・公・私立の小学校、中学校、高等学校をはじめ、幼稚園・専修・各種学校に至るまで、各学校毎の児童・生徒数及び教職員数等の実態及び、中学校・高等学校の卒業後の状況等について、詳しく掲載しております。
また前段総括編には、過去10年間の時系列データを整理するとともに、大学等の状況についても後編に付表として掲載する等、この一冊に県内全ての学校のデータが集録されております。
なお、この要覧は各学校等に配布されておりますので、各種の資料として大いに御活用下さい。
「いじめ」問題の解決のために
−義務教育課で資料作成−
今般、県教育委員会では、「いじめ」問題の解決をめざすための生徒指導資料M1を作成し、七月に配布しました。
この資料は、「いじめ」問題への県教委の取り組み、生徒指導推進会議での意見の概要、いじめ問題Q&A、資料紹介等で構成されており、今後二回の発行が予定されています。生徒指導等での有効な活用をお願いします。
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第三次福島県長期総合教育計画
第一期実施計画の昭和六十年度〔進行管理〕発表
県教委では、教育行政の適正な推進を図るため、たえず教育行政の「計画・執行・見直し」を行っています。
本年度も、昭和六十年三月に策定した長期計画の実施計画の見直し(進行管理)を行い、その実績を把握、評価するとともに、新たな課題、今後の方向等をまとめたものを発表しました。今後の教育行政を考える上での資料として大いに御活用下さい。