教育福島0115号(1986年(S61)10月)-043page
(3) 学習への意欲づけ、自ら学ぶ意志をもたせる。(導入演示実験)
(4) 生徒に所属感と責任感を自覚させる。(ひとり調べ・一人一役)
※ 特に(4)に比重をかけた。
自己学習課題探究の時間
単元指導時数三十二時間中五時間をあて、導入時に意欲づけとして重点的に情意面)(興味・関心)を刺激することを第一とした。
課題
植物のからだを支えている根は、どのように環境に適応しているか
1、資料提示……(資料省略)
海岸に生えていたタンポポと、田の土手に生えていたタンポポの根を掘りおこして提示する。
2、課題把握→仮設
水分の多少で、根の全長が異なるのではないだろうか。
3、学習形態
自分で調べたい植物を持ちより、既習事項を手がかりに「ひとり調べ」「班での調べ」をする。(既習事項・動物の世界でスケトウダラの卵の数調べ、植物の世界で植物の生活とからだのつくり)
4、展開
(1) 素材としてオオバコ・シダ・アシ・フジを使用する。
(2) アシとフジの根は完全に乾燥させたものを使用させ、測定法を考えさせる。
(3) 根の量の多いアシ・フジの測定法として、既習事項のスケトウダラの卵の測定法を想起させる。
・上皿てんびんで全質量測定
・○・一グラム分の根の長さを分担し実測
・全質量を長さに換算する
(4) 発表できるように模造紙に書く
(5) 全長がわかったら地図上に赤線でかきこむ。
(実践例 B型は省略−−B型で指導した単元は、「力のはたらき」「生物のからだと細胞」「電流」等)
生徒たちが主体的に調べ発表資料を作成する
六、考察
学力の一観点である興味・関心を高めるためには、知識・理解・技能が基礎としてしっかり定着していなければならない。
(1) A型で指導した実践例1の指導を個別化をめざして行うためには、本指導事例の基礎として、単元の学習内容が定着していることが大切である。
タンポポの根の資料の提示によって生徒の能力にあった素材で探究が行われ、また、測定作業でも各自責任をもって活動する姿が見られた。アシの根の長さが八十五キロメートルもあり、いわき市好間町にある本校から、相馬市までの長さであることを知ったときの感動は非常に大きかった。さらに、根の張り方や地上茎や葉面積とも関連づけて探究した者もあり、どの生徒の素材も個別に探究するのに適していた。
(2) B型での事例においては、ひとり調べの学習活動や班としての学習活動が、教師からまた学級から認められているという安心感は探究活動のエネルギー源となっている。特に日常生活の中で、自ら課題を発見し知的探究心を高揚させる源は「自分の課題をもつ喜び」が存在してはじめて躍動すると考える。
(3) B型で実践した場合、その単元の学習内容が定着していれば、探究形態は「ひとり調べ」が増加し、画一的な指導の問題点を克服する学習の個性化をめざすものとして効果があったといえる。
(4) A型・B型の場の設定や単元の学習指導の中で、生徒一人一人の記録の質の向上(ノートづくりなど)には大きいものがある。
七、結論
本時の学習事項が、既習事項で解決できる指導過程をくみ、それぞれ異なる素材で解決させたり、学習内容の一般化をはかるために個々の能力に応じた課題で探究活動をさせれば、生徒一人一人は、自分の素材や課題に責任感を強め、かつ所属感を満たしつつ学習活動に取り組む。また、素材は違っても一つの知識体系として、まとめられることなどの体験学習をすることで主体的な学習の意志・態度・能力の育成や感動を抱く学習活動をすることができる。よってこの手だてA型・B型は有効である。
八、かきおえて……
中学校の学年がすすむにつれて、理科ぎらいが増える。それを少しでも防げたらと考えて工夫したのが本研究です。生徒とともに、一生「理科が、自然が好き」で「理科を楽しみ」「自然探究にあこがれ続けられたら」大変幸せなことです。いつまでも、生徒とともに新しい試みに向かっていきたいと考えています。