教育福島0115号(1986年(S61)10月)-045page

[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

つまり、心身障害児の就学指導に当たっては、市町村の教育委員会は第一次的な責任を持ち、都道府県の教育委員会は補完的な役割を果たすことになります。図にすると、四十四ページ下段のようになります。

就学指導の実際は、次のとおりです。

1) 小・中学校

小・中学校においては、養護教育の対象児は、特殊学級の有無とは関係なく出現するのが実情です。従って、特殊学級を設置していないからといって校内就学指導委員会が不要ということにはならないと思います。学校創立以来火災がなくても、防災計画を立て、避難訓練を実施するのと同じことです。

校内就学指導委員会は、学校生活等に不適応をきたす、あるいは、きたしていると思われる幼児・児童・生徒を中心に、調査・観察を行って資料を整え、審議を尽くし、委員会としての判断をする必要があります。そして、その結果を職員会議に諮り学校全体で検討し、学校としての最終的判断は、校長の責任において行うことになります。

2) 心身障害児就学指導審議会

市町村の教育委員会は、就学時健康診断等の実施により、養護教育対象として所轄小・中学校より報告のあった幼児・児童・生徒について資料を整え、それぞれが設置する就学指導審議会に諮り、検討結果の報告を受けます。その結果を関係学校に通知するとともに、盲・聾・養護学校への就学該当者となった保護者等にもその旨を伝え、その就学については、保護者との間に話し合いをもたなければなりません。

3) 心身障害児就学指導会議

県心身障害児就学指導会議は、市町村就学指導審議会において、心身障害の種類や程度等あるいは障害が重複していて就学すべき学校の判断が困難で保留となった事例などを、より専門的な立場から審議する役割をもっております。なお、今年度、養護教育センターが開所するに当たり、県就学指導会議の事務処理は、県教育庁養護教育課より全面移管され、養護教育センターで行っております。

 

専門家(医師)による就学・教育相談

専門家(医師)による就学・教育相談

 

二、心身障害児の就学指導の進め方

 

就学指導を進めるうえで、基本的な事項は何か、これを考えるのに格好の詩がありますから、それをまず紹介します。

 

本当の生きる道

 

吾子が入学して一か月

はじめて知能の遅れを知ったとき

夫婦して鉄鎚でなぐられた思いだった。

無理にでも教えれば普通児になるだろうと

泣いていやがる子をおさえつけ

読み書きさせたあの二年間

やっぱりだめだった。

性格がいじけてしまっただけ

吾子のことでよく夫婦げんかが起こり

晴れることのなかった日々の連続。

人前に出るのがいやになり

生きるのぞみさえ失った私。

だが特殊教育の恩恵をこうむり

先生の大きな力が

ぐいぐい私達をひっぱってくれたとき

私達はこの子の

本当の生きる道を見出した。

それ以来

親子とも何と明るく変わったことだろ

う。

あのいじけた気持ちが

遅れた子を持つはずかしさが

劣等感が

うそのように心から消えていく

 

心身障害児の就学指導を進めるうえで、非常に示唆に富んだ作品だと思います。

諸検査等の結果、心身障害児であるということが明白であったとしても、それを知って、強い衝撃を受け、あるいは無理にでも指導・訓練すれば、健常児になるだろうと思い込んでいる親に、障害の種類や程度を知らせて養護学校入学該当だからと切り出したところで、反発をまねくだけでしょう。保護者の混乱の状態、あるいはそこからの立ち直りの状態を読みとりながら対処することの必要性を教えてくれる詩だと思います。

また、「教育は人なり」といわれるとおり、養護教育に携わる教員の資質能力も、就学指導上大きな要因になってくることはいうまでもありません。

心身障害児の就学指導は、この両面から考えていかなければならないと思います。

 

三、おわりに

 

就学指導の骨子を述べるにとどまりましたが、具体的には、当養護教育センター発行の所報「養護教育」第二号(昭和六十一年八月二十日発行)掲載の『提言 就学指導の改善・充実』(筆者・福島市立福島養護学校長中丸良彦一を併せてお読みくださるようお願いします。

 

 

 


[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

掲載情報の著作権は情報提供者及び福島県教育委員会に帰属します。