教育福島0116号(1986年(S61)11月)-033page

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で、文化財の管理状況・環境保全の実態把握などに留意し、保存管理上問題があれば、関係機関に連絡し、所有者や管理者に対し適切な指導助言をし、文化財保護に万全を期している。

 

三、発掘技術の研修

 

県では、埋蔵文化財の発掘調査体制の強化と保護の徹底を図るため、調査員の専門的知識と技術の向上に努めている。そのため、多種の研修への積極的な参加を呼びかけている。

国の埋蔵文化財センター主催の研修会には次の受講者があった。

環境考古課程に、飯村均(県文化センター)、基礎課程に、高木政光(県文化センター)、佐藤雅志(福島市教委)、宍戸弘治(県文化課)等である。

県主催の「第十四回福島県発掘技術者講習会」は、福島市、桑折町を会場に、二十二名の受講者があり、考古学に関する基礎的な知識と技術について熱心に受講していた。

 

四、開発に伴う発掘調査

 

埋蔵文化財は、土地利用関係と密接な関係をもち、その保存は容易なことではない。特に、最近のような公共性の強い土地開発の急増に伴う埋蔵文化財の保護については、いつもながら開発と保護との調整で苦労するところであり、早目に事前協議を行なうことが肝心である。

遺跡は、現状のまま保存するのが最善であるが、種々の開発事業によって保存不可能となる遺跡も少なくない。このような場合発掘調査を実施し、遺跡の全容を精細な記録に残すことになっている。

本年度、県教委で実施している分布調査は、国営農地開発事業の母畑地区、矢吹地区、福島空港である。発掘調査は、母畑地区、矢吹地区、会津農業水利事業、さらに相馬地域開発、国道一一三号バイパス、真野ダム関連、東北横断自動車道関連、史跡指定調査関和久上町遺跡である。調査は、史跡指定調査を除き(財)福島県文化センターに委託している。

また、市町村においても数多くの分布調査や発掘調査が実施されている。

それらの調査の主な成果は次のとおりである。

(一) 真野ダム関連遺跡

真野ダム建設に伴う発掘調査は、これまでの五年間で十一遺跡(一五、〇九〇平方b)の調査が終了し、古代の様相が解明されつつある。

今年度は、日向南、稲荷塚B、羽白D、羽白E、岩下向Aの五遺跡一二、○○○平方b)について四月十五日から調査が開始され、十二月十九日終了の予定である。

今年度は、まだ調査継続中であるが日向南遺跡について見ると、縄文時代晩期の竪穴住居跡約十軒、土坑約三十基、埋◆約十基が検出されている。

出土遺物も多く、土器片や土偶が多く出土している。他の遺構からも良好な資料が得られることが予想される。

(二) 相馬開発地区内遺跡群

今年度も四月中旬より、新地町の駒ケ嶺、今泉の武井地区、相馬市と新地町にまたがる東地区、相馬市椎木、大坪地区を中心とする西地区の三地区内にある遺跡を発掘し記録保存を行ってる。中でも西地区の段ノ原B遺跡は数多くの住居跡が発見され、縄文時代前期では東北地方最大級の集落跡である。

発見された遺構は、竪穴住居跡六十軒、土坑百九十基、炉三十六基、集石遺構三基等が検出されている。

遺物は、深鉢の縄文土器や石◆、石槍、石匙、磨石、◆状耳飾等が出土している。今後の調査で更に当時の生活が解明されることが期待される。

(三) 母畑地区・蛭館B遺跡(須賀川市)

国営総合農地開発母畑地区事業に伴う記録保存のための調査である。

蛭館Bからは、平安時代と思われる掘立柱建物跡が一棟検出されており、他に、時代は不明であるが、土坑、溝が検出されている。

(四) 会津農水事業・清水上遺跡(会津若松市)

国営会津農業水利事業における水路建設に伴う記録保存のための調査である。

調査の結果、平安時代の遺構と思われる掘立柱建物跡三棟、土坑七基、焼土遺構一基が検出された。

(五) 小申田横穴群(いわき市)

いわき市小川地内にある横穴墓群である。特に十三号横穴からは、全国でも初めての金銅製◆飾りの付いた弓が出土した。

(六) 松沢C遺跡(会津高田町)

会津高田町西方の山地の裾の丘陵部より発見された縄文時代早期の遺跡である。沼沢軽石層に覆れた遺物包含層から貝殻文、細い沈線文を特徴とする尖底土器がまとまって出土し、常世式の純粋遺跡として貴重である。

(七) 堂平遺跡(伊南村)

県指定史跡久川城跡の南に広がる縄文時代の遺跡である。本遺跡は伊南川左岸段丘上に位置しており、昨年久川城跡寄りの一部が調査されている。

今年度の調査では縄文後、晩期の土坑、配石遺構、石棺墓などの遺構群が検出されている。これらの遺構のあり方からすると遺跡の性格は縄文時代の墓所と考えられる。このような大規模な縄文時代の墓跡群が検出されたのは県内最初の例である。

(八) 窪田遺跡(只見町)

只見町大倉の伊南川左岸の段丘上の遺跡で、昨年は北半部、今年は南半部の調査を行なった。今年は弥生時代の再葬墓十三基等の遺構群が検出されている。土器は古代の弥生式土器の様相をそなえており、南会津地方のその時期を知る上で重要な資料となるものである。

 

 

 


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