教育福島0116号(1986年(S61)11月)-037page

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二等賞を受賞した生徒もいた。これらの研究論文は学習展示コーナーに貼付し、お互いに刺激を与え合って、学習意欲を強化した。

反省と考察

1)プランクトンネットや採集用具を持って、四倉港や海岸の潮だまり、夏井川河口に点在する沼などに生徒と一緒に採集に行ったことが、生徒たちが興味をもつきっかけとなった。

2)放課後、採集水を観察し、図鑑で調べ顕微鏡写真で記録したことが、生徒たちに科学的な調べ方の手順を知り、「自分にもできそうだ」、「やって見たい」という強い欲望をわかせたものと思われる。

実践例2) 「分解者のはたらき」

土壌動物(三年)

野外観察コースに出て、落葉が分解されていく様子、大型土壌動物、菌類などを観察し、班ごとに土を採集して持ち帰る。その土を班ごとに黒い紙にひろげ、小さな白い粒をピンセットでとり、顕微鏡で観察させる。検索図を印刷配布し、足の本数によって、「○○のなかま」と判定させ、みつけたものをチェックする。種類の異なるものは顕微鏡写真をとり、生徒と一緒に資料作りをした。

生徒の反応

生まれてはじめて見る異様な姿の小動物を見つけた時の感激は大きい。ふだん実験に手を出さない女子生徒も歓声をあげて観察していた。「きたないもの」と思っていた気持ちは消え、夢中ですごした。

実践例3)「身のまわりの生物の観察」

植物の世界(一年)……省略

(二) 問題意識を喚起させるための事象提示の工夫

実践例1)「圧力とはなにか」(一年)

丈夫なポリ袋に水を入れ、一メートルのガラス管をゴム栓に通した装置を作り、その上に六百平方センチメートルの板Aを当てて、その上に生徒が乗ったら水はどうなるかを予想させる。

同じ生徒が、百五十平方センチメートルのB板を当ててその上に乗る。今度はどうなるか。演示実験で生徒に体験させる。

事象提示の意図

A板の時は水は吹き出さず、B板を敷いたら水が吹き出した。この現象を見て、驚きと不思議さと疑問を持つであろう。圧力はなにによって変わるかを気付かせ、体験を通して理解させる動機づけとしたい。

教師の発問

1)M君がこの板の上に乗ったら水はどうなるか。2)B板になにげなくとりかえて、M君もう一度乗って見なさい。3)どうして水が吹き出したのだるり。気付いたことはないですか。

生徒の反応

1)楽しい授業だったが、いつのまにか真剣になっていた。2)板の面積の大きさによって、水の吹き出し方が変わるとは思わなかった。

実践例2)「物質とイオン」水溶液には電流が流れるか(三年)……省略

(三) 生徒企画実験を計画的に設置し、その実践を図る

実践例1)「いろいろな条件の台車の運動」 (一二年)

課題「台車をいろいろな条件で走らせ、その運動を記録タイマーで記録し運動の様子を調べる」

指導計画 一時=課題把握と実験計画、装置作りの計画、係分担を決める。放課後=各班ごと予備実験。二時=実験とデータ処理、結果の考察。三時=発表と話し合い。 (後日レポート報告)

反省と生徒の反応

この実験で生徒が夢中になった姿を見た。組立てる材料を自分たちで持ちより、一人一人が学習の目的を理解してやって見ようという気持ちになった時の意欲、他の班とは違う条件でやろうとアイデアを出す発想、思うように台車は直進しない、何度も失敗をくり返し原因を修正して成功させたねばり強さと探究心、「うまくいった」と体で感じた満足感等、この生徒企画実験で科学の方法が自然に身につき、その後の授業は意欲的になり知識もよく定着した。

(四) 科学部の活動

身近な自然の事象を研究するとともに、授業に役立つ資料収集と地域環境の教材化を目ざして活動してきた。

毎年野外観察の中から研究課題をみつけ、論文としてまとめて、日本学生科学賞に応募し、すばらしい実績を残した。主な研究として、

(1)水槽の中の微生物とミジンコの研究

(2)酸・アルカリ溶液中のイオンの移動による花色の変化についての研究

(4)四倉海岸における塩分の多少と海浜植物の分布について

 

四、成果と今後の課題

 

(一) 実験の目的を具体的に自分のものとしてとらえるようになった。

(二) 次の実験観察への期待感が大きく意欲的で、班で話し合う内容も真剣になってきている。

(三) しかし、教えられたことはわかるが、創造力を欠き模倣が多く見られる。

「理科は楽しい」、「授業の中で内容がわかる」と言う声も耳にする。なによりもうれしいのは、授業をやっていて楽しいことである。それは生徒たちの次の実験への期待感が大きく、意欲的で授業への関心が強くなってきたことである。

(四) 今後の課題

生徒一人一人に理科学習で考えることの楽しさと充実感のある学習の成立をめざして、個の特性や意志を生かした授業のあり方を研究し、「どうして」「なぜ」と言うことばが生徒から出るような授業研究に取り組みたいと考えている。

 

 

 


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