教育福島0118号(1987年(S62)01月)-032page
(二) 中心事象となじむ活動(資料3)
これまでは、学習課題を設定するために、事象提示という方法を用いてきたが、これまでの事象提示は、一単位時間のみに機能し、用い方も、その時間の授業の成立だけを指向していたと思われる。
また、児童の問題意識の持ち方には、個人差があり、提示された事象を見ただけで、問題意識が高まり、学習課題を設定できる児童がいる反面、中には、自分で試さないと問題意識が高まりにくい児童もいる。
そこで、単元の第一次限月(問題意識を育てる場)において、中心事象を提示し、児童に十分になじませ、児童の自由試行を基盤とする様々な試みをさせることにした。それらの活動を通して、「気づいたこと」「わかったこと」「考えたこと」「調べてみたいこと」をもとに、単元全体を見通すことのできるような学習課題作りができるようにした。
五 実践内容
問題解決力の育成、特に、問題を把握する力の育成のために実践してきた内容は、次のとおりである。
(1) 単元の目標を知識理解、実験観察の技能、科学的思考、自然に対する関心態度の各観点にそって分析し、単元でおさえるべき目標を明確にした。
(2) 単元の導入に提示する中心事象を開発した。
(3) 中心事象となじむ活動による学習課題作りのための基本的学習過程を作成した。
(4) 児童が作った学習課題を単元の骨子となる中心課題に集約し、「問題解決の木」を作成した。
(5) 授業の目標を活動目標として設定し、児童が作った学習課題を骨子とする単元の活動計画、活動の展開図を作成した。
六 実践の考察
(第三学年の授業の事例をもとに)
(1) 単元名「じしゃく」
(2) 単元の目標(内容省略)
(3) 単元の系統(内容省略)
(4) 単元の構想(内容省)
(5) 中心事象となじむ活動(資料省略)
本単元では、磁石の性質を調べたり、磁石を作ったりすることが主な活動である。児童は、提示された中心事象を見て、いろいろな動きをする船に興味を持ち、意欲的に活動し、磁石の性質について気づいていった。
(6) 学習課題作りのプロセス
児童は、中心事象となじむ活動の後、気づいたことをもとにして学習課題作りをした。例えば、「磁石を近づけると、つくときとはなれるときがある」と気づいていた児童は、「ついたり、はなれたりするのは、磁石の色に関係ありそうだ」と考え、「磁石がついたり、はなれたりするのはどんなときか」という学習課題を作った。
単元の第一次限の整理発展の段階では、一連の思考過程が機能的に働き、児童は、単元全体の見通しを持つことができたことが、発表やノートの記録から認められる。
(7)学習課題の集約と問題解決の木
児童が作った学習課題のうち類似している学習課題をまとめ上げ、単元の中心課題に集約する。また、この学習課題の集約の際に「問題解決の木」を作り、単元全体を通しての問題意識の持続化を図る。(資料4)
本単元では、磁石の性質を調べたり、磁石を作ったりすることが主な活動であり、中心課題もこの二つ一磁石の性質、磁石作り)となる。児童が作った学習課題のほとんどがこの二つの中心課題に集約された。
(8) 活動目標と活動計画並びに活動の
展開図
児童が作った学習課題をもとにして
資料4 問題解決の木
児童から出された学習課題
集 約
○ 磁石がっくときとっかないときは、どんなときか。
○ どうして同じ色のときはっかないのか。
○ 同じ色でもつくようにする方法はないのか。
○ 磁石のつなひきをしてみたい。
○ 磁石は、同じ方向を向いて止まるのか。
○ 磁石は、北や南をおしえてくれるのか。
○ くぎを磁石にしてみたい。
○ くぎは、磁石でこすると、ほんとうに磁石になるのか。
○ くぎを磁石でこすると、どうして磁石になるのか。
○ 磁石につくものを磁石にしてみたい。
○ くぎを磁石にすると、何本のくぎを持ち上げられるか。
中心事象になじむ活動