教育福島0118号(1987年(S62)01月)-033page
授業並びに単元を展開するためには、児童の活動を詳しく予測しなければならない。それには、教材に対する児童の願いを生かすための活動目標並びに活動計画が有効であると考えた。また児童の意識の流れを明確に把握するために、活動計画に並行して「活動の展開図」 (資料5)を作成した。
本単元において、児童は、「磁石の性質を調べてみたい。」「磁石を作ってみたい。」という二つの願いを持った。そこで、この二つの願いにそって単元は展開された。
本単元において、児童は、常に磁石についての問題意識を持ちながら活動していた。また、第三次において作ったくぎ磁石を単元の導入で用いた船に乗せて性質を調べるなどの活動も見られた。このことからも、中心事象となじむ活動によって生じた問題意識が、単元全体を通して持続されていたと考えることができる。
七 児童の変容
(1) 自然に対して気づく力はどう変わったか。
自然に対して、「なぜだろう」「すごいな」「ふしぎだ」「調べてみたい」という児童の意識は、全学年ともわずかではあるが伸びてきた。その原因として、
1)指導目標の分析、児童の先行経験の重視、児童の意識の流れを予測した活動の展開等、児童の意識を中核にすえて授業を考えてきたこと。
2)中心事象となじむ活動による学習課題作りのプロセスの中で、「気づいたこと、わかったこと、考えたこと、調べてみたいこと」という一連の思考過程が有効であったこと。この二つが考えられる。
(2) 学習課題に対する児童の意識はどう変わったか。児童は、理科の学習において、単元の見通しを持ち、学習課題を自己決定できるようになりつつある。
ところが、児童は、単元の見通しは持てるのだが、毎時間の学習課題については、なかなか決められないようである。
中心事象となじむ活動によって作られた学習課題は、単元の骨子となるものであり、単元全体を網羅することは不可能に近い。したがって、毎時間の終末において次時の課題を決めたり、場合によっては、新たな事象を提示することも大切である。
八 結 論
(一) 研究の成果
1)中心事象となじむ活動による学習課題作りの研究により、それを支える基本的学習過程が作られ、そのプロセスが明確になった。
2)与えられた課題による授業から、児童自ら決めた課題による授業へと授業の質的改善が図られた。
3)児童自らが決めた課題による授業並びに単元の展開の研究により、活動目標の「〜のために」(児童の願い)のとらえ方が一層深まった。
研究の成果として、特に、児童の問題を把握する力が高まり、理科の授業はもちろん、他の教科においても生き生きと学習に取り組むようになってきている。
(二) 今後の課題
1)単元の目標のほとんど総てと関連性を持つ中心事象を開発することは、目標分析とともに、教師のアイディアが大切であり、今後とも研究を推進し、より質の高い中心事象にしていきたい。
2)本研究においては、単元の導入時に学習課題作りをさせて、児童に単元の見通しを持たせたが、さらに一歩研究を進めるならば、児童自らの手で活動計画を立てることができるようにしたい。
資料5 活動の展開図
資料6 理科に対する意識調査(抜粋)昭和61年度