教育福島0118号(1987年(S62)01月)-035page
にあたってはしかと心にきざみつけておきたいことである。
三 実践全体を見通した方策
(一) 的確な児童理解に努める
児童が、問題行動をとるようになる要因は多元的である。したがって、問題をもつ児童の指導にあたっては、児童理解を的確にすることがきわめて大切である。
この実践では、児童を的確に理解するということを大きく二つの意味から考えてみた。一つは、子どもが児童期であるがゆえにもっている心理的行動や心的機能の発達的特性を知ることであり、もう一つは、児童が個人としてもつ心理的特性を知ることである。
児童理解を的確におこなうことによって、援助・指導の対象となる児童に対し、いつ、どこで、どんな内容をどんな方法でどうはたらきかけていけばよいかの具体的な対策をもつことができる。
(二) 学級づくりや家庭へのはたらきかけとも関連をはかった指導をする
問題をもつ児童への指導にあたっては、その児童に直接はたらきかけ心の悩みや不安の解消に努め自己実現を図ることが大切である。しかし、教師から児童への直接的なはたらきかけだけで十分とはいえない。児童は、学級や学校、家庭や地域社会など所属する集団や環境などに適応していく過程で自己変革を図っていくものであるから、学級や家庭には、問題をもつ児童を正しく理解し、気持ちよく受けいれ、その存在を認める雰囲気が醸成され、活動できる場が確保されていることが大切である。
問題をもつ児童への直接的なはたらきかけ・問題をもつ児童を受けいれ認めようとする学級づくり・家庭への啓発、この三つの関連を図った適切な援助・指導によって、問題をもつ児童を立ちなおらせることができると考える。
四、実践の全体構想と実践計画
実践全体を見通した方策に基づいて全体構想をもち、実践の全体計画を明確にして援助・指導にあたった。
(一) 実践の全体構想(資料1)
(二) 実践の計画一省略一
資料1 実践の全体構想
2) 実践例(S子への援助・指導)
一 S子に関する児童理解
(一) 児童理解の内容
児童が問題行動をとる要因は多元的である。したがって、児童理解にあたっては、総合的な把握が大切である。S子の理解にあたっては、次のことから考えてみた。
1) S子個人にかかわる能力・性格などについて知る。
ア 知能・学業成績・基礎的学力
イ 学校生活や学習への適応状況
ウ 性格・習癖、体格・体力
エ 興味・関心、不満・悩みなど
2) S子をとりまく環境について知る
ア 学級や学校での人間関係
イ 所属する学級集団の雰囲気
ウ S子の家庭環境
(二) 児童理解の方法
児童理解にあたっては、内容を客観的にとらえることが大切である。
この実践では次の方法を用いた。
1)生活の様子を事実のままに記述する観察記述法
2)指導要録、学級経営誌、日記などから資料を収集する方法
3)アンケート等の質問紙法
4)標準化されたテスト等を実施する各種検査法
5)教育相談や面接による方法
二 児童理解に基づいた問題行動要因の把握
S子に関する観察や調査結果は、実際の援助・指導に生かされるものでなればならない。この実践では、S子に関する観察等の結果を次のようにして実際の援助・指導に生かそうとした。
まず、S子に関する観察等の結果を「身体面」、「性格・習癖面」、「学校生活面」、「家庭環境面」の四つに整理・分類した。
次に、この四つの資料を一つの表にまとめ、それぞれの関連に留意しながらS子の問題行動の要因を分析的につかもうと考えた。 (資料2)
以上の事から、S子の問題行動の要因を次のようにとらえた。
(一) 家庭環境面の要因
1)親子の会話が少なく、相互理解が不十分ではないか。
2)転居、転校、長兄の病死などのため、明るく落ち着いた生活ができないのではないか。
(二) S子自身の性格面の要因
エネルギッシュで自己中心的傾向が強く、リーダ的存在であることを強く望んでいる。しかし、実際の活動面では、仕事の処理能力や問題の解決力、統率力、判断力などが伴わず、自分の理想と現実とのひらきに対処しきれないでいると考えられる。
(三) 学校での指導面の要因
特に、教科指導で個に応じた学習