教育福島0118号(1987年(S62)01月)-037page

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目的が達成できる場と機会を設定し活動させた。

2) 学級の問題や悩みを話し合わせ解決のよろこびを味わわせる。

3) 友情・親切・寛容などの道徳的価値について考えさせ、思いやりの態度を育てる。

(二) 家庭との連携

1) 学校や学級の教育目標について理解してもらう。

2) S子の問題行動の概要及び心情について理解してもらう。

3) S子の立ちなおりを目ざした援助・指導の内容と方法を理解してもらう。

(三) 校内の共通理解

現職教育を中心としてS子への指導方法を話し合い、共通実践に努めた。特に、女の先生方からは、女の子の心理に関する貴重な助言があり、大変役立った。

(四) 外部機関等の助言指導の要請

S子への援助・指導を適確におこなうため、特に、学校医及び児童相談所の助言指導を求めた。児童相談所には、担任と父親が出むき大変お世話になった。

 

3) 実践のまとめ

 

一 実践の成果

 

S子に対して、前期(四〜九月)には特別活動の領域を中心に活動の場と機会を設定するなどの援助・指導をおこなってきた。しかし、S子は、教師の意図する望ましい変容をみせなかった。

そこで、後期をむかえてからは、今までの指導を反省し、ただ形式的に活動の場と機会を設定するだけでなく、教育相談や日常生活での語りかけなどを中心に内面的な心情の理解に努めてきた。更に、教師と保護者が児童相談所の助言指導などをもとに真剣になって対策を話し合ったころから次第に望ましい変容をみせ、劣等感や自信喪失に苦しみ悩む言動が少なくなった。

S子は、今年の四月中学校へ進学したが、夏休みには、中学校生活を書きつづった日記をもって担任を訪ねてきた。その後も時々近況を知らせてくれている。S子の日記や手紙からは、S子が自分なりの目標をもって生活していることが感じとれる。(資料4)

S子は、今年の秋、町でおこなわれた意見発表に参加し「生きる」ということについて考えを発表した。

S子からの手紙

先生こんにちは元気ですか?2学期になってもうだいふたちます

先生うれしいことをおつたえします 水泳で平泳ぎ二百メ−トルおよげました バックもやっと25メ−トルおよげ2級になりましたそれとね きのう九月六日にやったマラソン大会、かんそうしたよかんそうしえ時はとってもうれしかった 今年のマラソン大会は小学校の時よりつかれなかった。びりの方というのはなさけないけどかんそうしたのはうれしかった。

先生にも見せてやりたかった。

いろいろありましたが自分としてはよくできたと思います。

もうみんな元気だよ。Kさんも明るいし、みんなとしゃべるし 私ももうN子ちゃんといっしょに毎日あそんでいます。先生もおげんきで。

 

二 今後の課題

 

この実践では、前半の援助・指導でS子を変容させることができなかった。それは、(S子に活動の場と機会を与えれば問題は解決される)という見通しのあまさがあったからだ。

たしかに、児童が活動できる場と機会を確保してやることは大切であるがそれが形式的になってしまうところに問題がある。今後は、児童の心深くまでふれ、児童と共に問題を解決していく指導のあり方を研究したい。

また、問題の発生を未然に防ぐ指導も課題である。S子の場合、学習指導で確かな基礎学力を身につけさせる授業にもっと力を注いでいれば、あるいは、問題の発生を防ぐことができたかもしれないと考えるのである。

 

資料3 S子への援助・指導の実践例(指導記録より)

資料4 S子の日記

 

資料4 S子の日記

今日は先生から手紙がきました。とってもうれしかった。今までに一ばんうれしかった。先生ありがとうこさいました。

これをもとに一生けんめいがんばっていきたいと思います。

これは、はけみになりました。本当にありがとうこさいました。

これからも、いろいろなめんでがんばります。

ありがとうこさいました。

 

 

 


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