教育福島0119号(1987年(S62)02月)-042page

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特選入賞論文

 

社会科学習指導の実践

−追究活動の工夫改善−

 

郡山市立安積第一小学校教諭

相楽 正人

 

−解 説−

 

−解 説−

本論文は、昭和六十一年度教職員研究論文に特選入賞されたものです。

研究主題「子どもの多様性に応ずる社会科学習指導の実践−追求活動を促す指導計画の工夫改善−」について、児童の学習に対する興味や関心の差を生かした、さまざまな指導方法の研究に取り組まれた優れた論文です。

 

一、研究の趣旨

 

(一) 研究の動機とねらい

 

これまでの社会科の授業をふりかえると、系統性をおさえることや授業案の形式に目が奪われ、児童一人一人の興味・関心を大切にすることが少なかった。すなわち、「一人一人を生かす」という言葉を掲げても、各自の調べ学習の結果を授業の質を高めるために用いる傾向が強かった。

また、教師側に「自分は学級担任だから、児童の資料活用能力や適性について、十分理解できている」という思い込みがあった。

しかし、授業案は教師側の指導の都合で立てられるものではなく、児童の

「ここでやりたい」・「こんなまとめにしたい」という学習に対する欲求が、組み入れられなければならないはずである。

そこで、児童の興味や関心に応じた(小単元)中心概念による指導計画の在り方を、検証授業を通して模索してみたいと考え、標記の主題を設定した。

 

(二)学習の問題点

 

○学習問題に対する追究意欲が持続しない。

○調べ学習の方法(なにを、どんなふうに調べたらよいか)がよくわからない。

○「すごい」・「かわいそう」などの言葉による画一的なまとめが多く、文章による表現が苦手である。

○グループによる学習活動が形式的になりやすい。

 

(三) 原因

 

(1) 教師側から

(ア) 教師側で作成した指導計画を、形式的に進めがちであった。

(イ) 小単元の指導計画に時間的.内容的なゆとりがなかった。

(ウ) 児童一人一人に対する調べ学習の指導が少なかった。

(2) 児童側から

(ア) 学習問題の興味・関心とが結びついていない。

(イ) 小単元の学習問題に対するまとめをどうするかの見通しが立てられない。

(ウ) グループ学習の進め方がよくわからない。

以上のような分析をもとに、児童が、「楽しく学習できる授業」をめざして、次のような仮説を設定した。

 

二、研究の仮説

 

(小単元)中心概念による指導計画に自己選択の場を設け、次のような手だてで児童の学習に対する興味・関心の差を生かすことができれば、追究意欲を高めることができ、より効果的に個々の力を伸ばすことができるであろう。

(1)児童の興味・関心にもとづいて学習課題・学習コースを選ばせる。

(2)児童に本時の位置を知らせるとともに、授業についての自己評価をさせる。

○学習計画表に授業の反省を書く。

(3)学習の足跡がわかるまとめを工夫させる。(一単位時間あるいは、小単元のまとめ)

○学習のまとめをイラストや文章でノートに書き表す。

 

(一) 仮説についての説明

 

(1)「一小単元一中心概念」

一小単一サイクルによる展開計画と同じ意味である。すなわち、一つの小単元を一つの中心概念の形成をめざして、追究活動を展開していくことであるととらえた。

(2)「自己選択の場」

学習者が、それぞれの興味・関心に応じて学習課題や内容、学習コースを選択する場ととらえた。

(3)「興味・関心の差を生かす」

児童一人一人の能力・適性には、個人差があるという考え方に立ったうえで、学習に対する欲求(「こんな課題で調べ学習をしてみたい」・「ここまでやりたい」・「こんなまとめにしたい」)に学習形態の組み合わせを考えながら、個別指導を多くとる方向で、一人一人に学習の成立をさせていくこ

 

 

 


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