教育福島0119号(1987年(S62)02月)-000page
![]() ![]() |
![]() |
教育福島 ’87 2・3月号 Vol.119
目次
−表紙絵〜ベン・シャーン 「一篇の詩の最初の言葉」−
特集
教育センターから [PDF] 昭和62年度教育センター研修計画
養護教育センター通信 [PDF] 昭和62年度養護教育センター研修計画
図書館コーナー [PDF] 昭和62年度県立図書館事業の概要
名画散歩
表紙絵「一篇の詩の最初の言葉」 ベン・シャーン作
版画集〈リルケ「マルチの年記」より〉
(紙・リトグラフ 五七.三×四五.三cm
一九六八年制作 福島県立美術館蔵)
一年間に渡って、アメリカの画家ベン・シャーンの作品と生涯をご紹介してきました。今月号ではその最後として、ベン・シャーンと現代の芸術について考えてみたいと思います。
「写実から抽象へ」これが二十世紀前半の美術の大きな流れでした。写真の登場などによって、本物らしく描くだけでは絵画の存在意義が薄れてしまったのです。また、美術の愛好者も王族、貴族、僧侶など一部の人々ではなくなり、多くの人々が美術に対して多様な要求を持つようになったので、画家たちは、誰のために何をどう描くべきか悩んでいます。現代の美術が写実的な絵画、抽象絵画、様々な素材を使った作品、さらには描かれた作品よりも描くという行為を重視する。パフォーマンスに至るまで多様な傾向をもっているのは、このような理由によるのです。しかし、社会の動きと同様に美術の流れも早過ぎるために、人々にとっては理解するのが難しくなっているのが現実です。
このような中にあって、ベン・シャーンの芸術はどの様な意義を持つのでしょうか。貧しい移民であった彼は、自分と同じように貧しい名もない民衆のために描きました。彼の作品の中心的なテーマは、目まぐるしく変貌し、高度に技術が発達して便利にはなったけれども、しばしば人間を疎外する現代社会と、そこに生きる人々の姿です。彼の絵は一見単純で、漫画のように見えるかも知れません。しかしよく見ると構図も形も色も質感も慎重に考えられています。その上で、できるだけ単純に画面を構成しようとしているのです。彼は絵の中にメッセージを込めました。絵を通じて人々と連帯することを求めたのです。
現代の美術はますます複雑になり、難解になっています。これが美術なのだろうかと考えてしまうものも少なくありません。その中でベン・シャーンの作品はむしろ地味ですが、しかし今も静かに私たちに語りかけているのです。
![]() ![]() |
![]() |