教育福島0123号(1987年(S62)08月)-014page
例えば、理科の学習では、児童生徒に問題意識が高まり、課題が設定されたとき、観察や実験をするか、情報収集をするかなど、どこから切り込んでどのような手順で結論まで到達するかの筋道が立てられる。このような手順が学習の仕方である。
これは、探究的、問題解決的な授業の過程とおおよそ合致しており、場合によっては、基本的な「手順」をカードやプリントで示してやることもよい。しかし、それに固執したり、型にはめてしまったりしないよう柔軟に対応する必要がある。
2) 学習の方法の学習
児童生徒が主体的に学習するためには、学習内容についての分析の仕方、操作の仕方、見方や考え方など、思考の仕方が重要な意味をもってくる。
例えば、社会科の歴史的事象の学習においては、「いつ、だれが、どこで何を、なぜ、どのようにして」などの観点で分析していくと、事象間の関連や因果関係などが分かり、社会的意味を把握することができる。
教師は、児童生徒の発達段階に即して、学習の手順や方法の指導を計画的・意図的に設定し、指導を積み重ねることによって自ら課題を解決していく力を育成していくよう配慮することが大切である。
(3) 主体的な活動の場の設定
児童生徒が主体的に学習できるようにするには、時間的にゆとりをもたせ、十分活動できる場を設定することが大切である。
そのためには、まず教師は、教科の本質に基づいで指導の目標を具体的にし、その目標に即して指導すべき内容を基礎的・基本的内容に精選して、指導計画を立案する必要がある。
授業中に活動の場を設定するときは、次の点に留意する必要がある。
ア、一単位時間の中に、中心となる活動をまず一つだけ明確におさえて、時間を十分にとる。教師側の動機づけの指導に多くの時間をかけ過ぎて、児童生徒側の本来的な活動が不足しないようにすること。
イ、目標を明確におさえ、活動の方法を十分にとらえさせたうえで活動に取り組ませるようにすること。
ウ、本時のまとめの段階では、整理の作業を通しながら児童生徒一人一人のまとめになっていくようにすること。
(4) 主体性を支える学習環境
日常の友人同志の会話は、極めて活発なのに、授業では学年が進むにつれて発言力が低下する傾向にあることを厳しく受けとめる必要がある。何が発言意欲を低下させているのか、教師はその原因をとらえ、除去する努力を続けなければならない。
教育を支えるものは、「教える者と教えられる者との間の信頼関係にある」と言われる。教師自ら次のことを反省してみることが大切である。
1) 学習の主体はあくまでも児童生徒にあるので、教育の本質は、教師が教え込むことではなく、一人一人の学習を援助することにあることをふまえているか。
2) 児童生徒一人一人の存在感を認めるような配慮をしているか。
○「わかるようになりたい」、「できるようになりたい」という児童生徒の心をどのように受けとめ、どのように生かす工夫をしているか。
○児童生徒の発言や発想を生かすために、全身を耳にして聴く努力をしているか。
3) 児童生徒が自己の意思を決定できる場を取り入れるような配慮をしているか。
○児童生徒一人一人がそれぞれ自分なりの考えや意見などを自由に発表できる環境になっているか。
○他人の考えを尊重し、お互いに啓発し合う望ましい学級集団を育てる指導に手ぬかりはないか。
4) 児童生徒の興味や関心、欲求等を生かした物的環境が教師と児童生徒の創意工夫によってつくり出されているか。
2、「分かる」「できる」授業
「分かる」、「できる」授業を創造するため、次のことから学習指導の改善を図っていくことが考えられる。
(1) 個人差に応じた学習
それぞれの児童生徒は、学習速度、学習スタイル(「演縄型、帰納型」「言語型、イメージ型」「衝動型、熟慮型」)などに多様な個人差がある。こうした個人差をもった一人一人の児童生徒に学習を成立させ、健やかな人間形成を図るためには、個人差に応じた指導を推進していく必要がある。
その具体的な対応としてはいろいろ考えられるが、例えば次のような手だては、学習課題・学習コースを選択させることによって、主体的に学習を進めるように導くことができる。
○ いくつかの課題やコースの中から児童生徒が選択して学習する。
○児童生徒の学習課題は同じであるが、学習する順序、組み合わせを児童生徒の選択に任せる。
○教師があらかじめ学習課題を用意しておくのでなく、児童生徒自らに設定させる。
(2) 学習内容の定着
すべての児童生徒には、基礎・基本となるものを確実に身につけさせることはもちろん、さらには、それを用いて新たな課題に立ち向かわせることが大切である。基礎的・基本的内容を定着させるためには、次のような手順をふむことが大切である。
1) 脳裏に強烈に焼きつけるような・または、心をゆさぶるような教材の提本や指導法を工夫する。
2) 知識の体系をしっかりとおさえ・構造化した内容として順序よく指導し、