教育福島0123号(1987年(S62)08月)-016page
道徳的実践の指導である。
児童生徒の実態、学校や地域の実態等を的確にとらえ、家庭や地域社会との連携を図って指導の徹底に努めることはきわめて重要である。
また、家庭や地域社会が貴重な道徳的実践の場であることから、家庭や地域社会の理解や協力を得、指導の一貫性を保つことが道徳教育の充実には欠かすことのできない方策であることを再認識する必要がある。
各教科や特別活動等の日々の指導の中で、どのように道徳的実践の指導を行うかについては、全体計画や年間指導計画に明確に位置づけて、学校の全教師のもとに指導が行われるようにする。道徳性に支えられた行為を身につけようとする道徳的実践の指導(行為の動機づけ)は、一般に次のア〜ウによることが多い。
ア、指示的、強制的指導−−他律的動機づけ。
イ、模倣による指導−−親や教師のうしろ姿で学ぶ。
ウ、自発的、主体的学習を促す指導。−−自律的動機づけ。
人は、常に他律から自律へと志向することが成長の原則であり、他律的動機に基づくよりも自律的動機に基づいて行為することを求めている。
ア、イ、ウそれぞれが教育的意味をもっているので、児童生徒の発達や個人差に応じながらバランスのとれた指導一他律から自律へが原則一に努めることが大切である。
3、道徳的実践力を培う指導
道徳の時間の指導は、道徳教育の目標実現を目指し、計画的、発展的な指導を通して各教科や特別活動における道徳教育の「補充、深化、統合」を図る。それにより、児童生徒の道徳的判断力を高め、道徳的心情を豊かにし、道徳的態度と実践意欲の向上を図るなど、道徳的実践力の育成を目指している。
この道徳的実践力を培うために、次の事項に配慮して指導を進めることが大切である。
ア、道徳教育の全体計画における道徳の時間の位置づけを明確にする。
全体計画は、道徳教育を有機的、効果的に推進する基盤になるものであり、道徳の時間の指導計画を作成する上でのよりどころである。したがって、これらの関連を明確に図る必要がある。
イ、主題のねらいを明確にする。
主題のねらいは、一般的には道徳教育の重点目標や学年の指導の重点、児童生徒の道徳性の実態等をふまえながら、学習指導要領に示された内容に沿って資料との組み合わせを考えて定めるようにする。
ウ、適切な指導過程の組織化を図る。
道徳の時間の指導過程は、道徳的価値についての主体的な自覚を深めさせるための指導の手順を示したものである。児童生徒や学級・学校の実態に即し、教師自身の持ち味を生かした指導を目指すことが大切である。また、発問や資料等を吟味し、指導方法についての改善を加えるなど、児童生徒に望ましい人間の生き方を追求させ、ものの見方、考え方、感じ方を深めさせる指導過程の工夫図ることが大切である。
エ、道徳性についての評価を適切に行い、児童生徒の実態の把握に努める。
教師が児童生徒の人間的成長を見守り、よりよく生きようとする努力を評価し勇気づけること、また、一人一人の児童生徒の道徳性と全児童生徒に見られる道徳性の傾向とが、道徳教育の重点目標や指導内容に照らして、どれほど変容し、成長したかを明らかにするよう努めることは大切なことである。しかし、短時間や短期間での変容の評価には十分留意し、常に広い視野に立って長い目で見つめていくようにする。
4、家庭及び地域社会との連携
今日、地域の教育機能の衰退、家庭の教育力の欠如が大きく問題視されている。家庭は基本的な生活習慣を育成する中心的な場であり、児童生徒の道徳的実践の場でもあるので、人間形成上重要な役割をもっている。学校との連携によって、この役割を十分に果たせるよう家庭教育の活性化、地域社会の教育力の強化充実を図る努力が望まれる。
連携を図る取り組みとして、次のようなことが挙げられるが、さらに学校や地域の実態に応じて創意工夫を生かす努力が望まれる。
ア、家庭との連携
道徳の授業公開、道徳のしおりの発刊、学校だより、学年通信(学級だより)等の発行、交信ノート、親子奉仕活動、保護者懇談会、親子レクリエーション等。
イ、地域社会との連携
地域ぐるみのあいさつ運動、クリーン運動への参加、地区懇談会、道徳教育講演会等。
五、特別活動の充実
特別活動は、「人間性豊かな児童生徒の育成」を目指す立場から、各学校が最も創意工夫を生かし、特色ある教育活動が十分展開されるよう計画、実践できるところに特徴がある。
したがって、効果的な特別活動を展開するためには教師一人一人が望ましい集団活動を通して「なすことによって学ぶ」という教育的意義をよく理解し、指導にあたることが大切である。