教育福島0123号(1987年(S62)08月)-019page
交友関係が個に及ぼす影響が大きいことから、交友関係の推移や現状その親密度、構造や雰囲気などの理解が大切である。
7) 生育歴
生育歴〈出生後の健康状況、発育養育の状況、生活習慣(しつけ)の形成状況など〉は、児童生徒の人格形成に大きな影響を及ぼしている。
8) 家庭環境
家庭の人的構成、生活水準、 雰囲気、両親の教育的関心、養育態度などの把握は、特に大切である。
9) 地域環境
児童生徒を取り巻く地域の社会環境の特質及びその動向についての実態把握は、児童生徒の深い理解につながる。
(2) 検査・調査資料活用に当たっての留意点
○信頼度や妥当性の限界に注意し、資料を過信したり、主観的な解釈をしないこと。
○広範囲にわたって偏りなく収集した資料を総合的に利用すること。
○児童生徒・保護者への資料の提示は慎重にすること。
2、個の悩みに応える教育相談
個人のもつ悩みや困難を解決し、その生活に適応させ、人格形成への援助を図ろうとする教育談がますます重視されてきている。
児童生徒一人一人は、それぞれ悩みや不安を持っている。「勉強がわからない」「すぐあきてしまい、やる気がおきない」「はずかしくて発言できない」等、学習への興味や意欲に関して深刻に悩んでいる場合、適切な援助指導をして悩みや不安を除去してやることは教師の重要な責務である。
学校における教育相談には、次のような特質がある。
1)いつでも気軽に相談できる
2)児童生徒の資料が得やすいので、すぐ活用でき有効な手が打てる
3)常に教師と児童生徒が接触しているので、ラポートをつくりやすい
4)長期にわたり継続的な指導ができる
5)家庭や地域の協力が得やすい
学校では、これらの教育相談の特質を生かして、組織的、計画的に教育相談を実施し、個々の発達課題の解決のための援助指導を進めることが大切である。
教育相談の充実を図るために、次の点に配慮する必要がある。
1)すべての児童生徒を対象に全教師が当たれる体制をつくる
2)児童生徒が相談教師を選べる体制をつくり、それに対する教師間の相互理解を深める
3)相談室を整備し、相談しやすい雰囲気づくりをする。
4)相談室以外での教育相談がいつでも、どこでもできるようにする。
5)相談結果を指導資料として活用できるよう工夫し、継続的な援助指導に努める。
3、生徒指導の機能が働く授業の展開
学校において、教師と児童生徒のふれ合いの最も多いのは、毎日の授業時間である。一・時間一時間の授業実践の中にこそ、生徒指導の機能が生きて働き、生徒指導のねらいが、個に即して達成されるように配慮しなければならない。
(1) 生徒指導の機能が生きている授業
○主体的な学習態度を育てる授業
○学習への興味・関心を引きおこす工夫のある授業
○すべての児童生徒に、成就感、満足感を与える楽しい授業
○個に即して存在感を持たせる授業
○自己実現をめざして一人一人を最大限に生かそうとする授業
○児童生徒が互いに認め、励まし合う人間関係に支えられた授業
(2) 人間尊重の精神に立脚した教師の指導姿勢
児童生徒一人一人を大切にし、その人格の最大限の伸長を図るために、教師は次のような配慮をして、授業を展開することが大切である。
1) 児童生徒の実態を十分に把握する個々の生育歴や家庭環境だけでなく、人間関係も的確に把握する。
2) 何でも自由に安心して発言できる雰囲気づくりに努める。
3) 児童生徒が持っている欲求や願いを、常に的確に理解する。
4) 教材の質や量を吟味し、分かる授業の展開に努める。
学習能力の低い児童生徒に対してこそ、思いきった教材の精選を図り分かる授業を展開し、学習への興味や関心を高めるよう配慮する。
5) 積極的な学習態度を引き出す動機づけの工夫をする。
自己の能力が向上したと自己評価できる状態を経験させることが、次の学習意欲を高める動機づけとなる。
6) 全員が学習活動に参加し、教師に受容され、ほめられ、十分に存在感を自覚できたという状態になるように、授業を展開する。
七、学年・学級経営の充実
1、学年・学級経営とその課題
最近は、地域社会や家庭環境の変化にともない、児童生徒の変容が著しく、学習指導や生徒指導において、学級担任教師一人の力では解決できにくい問題が生じてきている。
これらの問題を解決し、学校教育の一層の充実を図るためには、教師集団が共通理解と責任のもとに相互の連携