教育福島0123号(1987年(S62)08月)-049page

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れまでの「校内判別委員会」を「校内就学指導委員会」と名称を変えるとともに、市町村就学指導審議会との連携強化の必要性が指摘されるようになってきました。それは、一、二の教師の判断で決めるよりは、いろいろな専門領域や立場の人たちの会議によって決めるほうが、一般的にいって望ましいという考え方からの発想といえます。

就学指導を行う際の各機関等の相互の関係は、図1に示したとおりです。すでに述べたとおり、就学指導は市町村教育委員会が中心となり、関係機関と連携・協力して行われなければなりません。なお、図中の「県就学指導会議」は、今年度から当分の間、業務を休止することになりました。そのため市町村就学指導審議会の責任は重くなりますが、教育措置の判断に必要な資料の整備に当たっては、校内就学指導委員会の段階で、必要に応じて養護教育センターの相談機能を最大限に活用することにより、十分対処できるものと考えられます。

 

四、校内就学指導委員会の任務

 

校内就学指導委員会が計画・実施する在学者及び新入学者に関する心身障害児の把握と、それに続く教官措置判断資料の作成の良否は、市町村就学指導審議会での判断結果か適正かどうかに反映する重要な意味を持つでいます。特に、特殊単級がよいか、通常単級で留意して措遺するのがよいかの判断に迷う事例については、養護教官センター等の相談機関の協力のもと判断資料の収集整備には万全を期す必要があります。なによりも判断資料の良否が、一人の人間の将来を決定する重要な意味を持っていることを考えますと、当然そうすべきだと思います。

校内就学指導委黄金をそのように理解するなら、校務運営機構への位置づけは、重要事項を扱うにふさわしい配慮が必裏であり、そうしなければなりません。とにかく、一人の子どもの過去や現在の状況を適確に把握し将来の予測までをも行うに足る資料を整える責任があり、この取り組みには慎重な態度で臨まなければなりません。

校内就学指導委員会は、以上のことを基盤にして、表1のような業務を推進することになります。

 

五、学校での就学指導上の留意事項

(1) 実態把握・判断資料作成は、教育という視点から整理すること

障害の種類や程度を判断するための資料は、心理学や医学などの分野での検査、観察、診断等を中心にしますが、結果の数値や××病という記述だけでは、何の役にも立ちません。たとえば、ことばがないという場合、発声器官に問題があるのか、耳の聞こえはどうなのか、養育環境はどうだったのか、また、知的発達や情緒の面はどうなのかを一つ一つチェックする必要があり、かつそれらに関する具体的な所見があってはじめて資料として意味を持つのです。

(2) 親の気持ちの整理を側面から援助するように心がけること

障害児を持つ親の気持ちは一様ではありません。ある心理学者の分析によると、次のような経過をたどるといいます。

1)衝撃:わが子が障害児であることを知った驚き。

2)拒否:障害児であるという診断を受け入れないで拒否する。

3)恥辱:障害児を持ったことを恥ずかしく思う。

4)苦痛と嫉妬:たび重なる苦痛と障害児を持たない親たちへの嫉妬。

5)過保護と排斥:かわいそうと甘やかしたり、厄介な子だと排斥したりする。

6)適応:障害児を正しく理解し、事態をうまく調整し、適応する。

保護者がいまどの段階にあるかを見定めて、援助することが大切です。

 

六、おわりに

教師が教育に前向きに取り組むことによって、子どもが変わり、保護者の心も変わるという一面があります。教師と子ども及び保護者との信頼関係が、ひいては、養護教育に対しての理解と保護者を含めた地域社会の評価を生み、円滑な就学指導へとつながっていくという報告をよくききます。就学指導の問題は、そうした意味では、教育そのものの中味の充実にかかわることでもあります。つまり担任の資質の問題です。

今後、養護教育の実践が一層の成果を上げ、周囲の理解を深めてゆけば、就学指導がより充実した形で行われるようになるにちがいありません。

 

表1 校内就学指導委員会運営計画の例

1) 年間活動計画

2) 運営

2) 運営

定例会を月1回、第3○曜日、午後○時から

3) 内容

・就学、入級指導に関すること

・関係諸機関との連携 ・交流指導 ・研究調査

・資料の分析 ・父母、地域社会への啓発

 

 

 


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