教育福島0124号(1987年(S62)09月)-008page

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特集〔1〕

 

●進路指導の充実

 

−中学校−

 

はじめに

 

中学校学習指導要領の総則には、進路指導について「学校の教育活動全体を通じて、個々の生徒の能力・適性等の的確な把握に努め、その伸長を図るように指導するとともに、計画的・組織的に進路指導を行うようにすること」と示されている。

また、最近の臨時教育審議会の諸答申をはじめ、教育課程審議会の中間まとめなどにおいても、青年期における人間の在り方・生き方に関する教育が重視され、中学校における進路指導の一層の充実が検討されている。

現在、中学校における進路指導は、必ずしも充実した指導が展開されているとは言い難く、さまざまな問題点や課題が指摘されている。例えば、三学年における単なる就職紹介や上級学校への進学指導等に陥りがちなことや、一学年当初より計画的、継続的に適切な進路指導が実施されていない面があることなどである。

したがって、生徒の将来における生き方の指導や人生観・職業観などに立脚した自己実現のための進路選択・決定への援助指導を一層充実する必要がある。

県教育委員会では、中学校における進路指導上の努力点として次の三項目を掲げている。

一、共通理解を深め、指導体制を確立する。

二、地域や学校及び生徒の実態に即して指導計画を改善し、指導を充実する。

三、家庭や地域、関係諸機関との連携を一層強化する。

また、昭和六十一年七月十一日付の「適正な進路指導の推進について」一通知)や「教育福島」八月号の「進路指導の充実」を通じて各中学校に対して進路指導についての深い理解と一層の努力を要望している。

本来、進路指導は、変動する社会の中にあって自己を正しく生かすことができるよう、進路についてのしっかりした人生観・職業観を自覚させる指導であり、将来の生活における生き方の援助指導である。その中で、生徒一人一人の能力や適性を的確に把握し、将来の進路を計画し、選択する能力を育てることを最も重要な役割としている。

したがって、進路指導を進めるに当たっては、中学校の三年間を見通して学級指導の授業を中核としながら学校教育全体を通じて計画的、組織的に援助指導を行うことが大切である。

そのためには、各学年における学習内容の発展・系統性を明らかにし、各学年の指導の充実に努めることが必要である。

例えば、第一学年では、進路についての関心を深めることに重点を置き、自己を理解し、進んで進路を計画しようとする態度を養う。

第二学年では、進路を明確にしていくことに重点を置き、自己理解を深め、職業や上級学校などに関する進路情報を理解させ、一層明確な進路希望や計画をもたせる。

第三学年では、自己にふさわしい職業や学校を選択し、進路を具体的に決定させる。その際、就職希望者と進学希望者との相互理解を図る配慮も必要である。

以下、中学校における進路指導の望ましい在り方を求めて、自校の問題点や課題の解決のために全校挙げて研究に取り組んでいる中学校の実践例を紹介する。

西白河郡大信村立大信中学校は、昭和六十一年・六十二年の二か年にわたり、県教育委員会の研究指定を受け、進路指導の改善・充実をめざし、今、大きな成果をあげつつある。

この学校は、学校の教育活動全体の中において組織的、計画的な進路指導を推進するとともに、生徒一人一人に目を向け、自己理解、自学、自己実現への意欲を育てようと努めている。そのために学級指導の授業において自己理解を深める手だてを追求している。研究の成果は、昭和六十二年十月二十九日(木)に発表される予定である。

各中学校においては、進路指導の今日的課題を正しく理解し、大信中学校の研究成果を参考にしながら自校の進路指導の在り方を見直し、その改善・充実に一層の努力を期待する。

 

 

 


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