教育福島0124号(1987年(S62)09月)-031page
特集〔3〕
交流教育の推進
養護教育課
はじめに
心身障害児に対する教育は、心身の障害の種類や程度に応じて特別な教育的配慮のもとに行われる必要があります。
しかし、これらの心身障害児と心身に障害のない児童生徒とが活動を共にし、交流することにより、その人間形成、社会適応、学習活動など種々の面において、その効果が大いに高められるという点も見逃せません。また、心身障害児と一般の子どもたちが活動を共にするなど互いに交流することは、心身障害児のみならず、すべての子どもにとって次のような点で意義深いことと考えられます。
すなわち、健常児にとっては自分たちと心身障害児とのなかに多くの共通点を見いだし、仲間意識をはぐくんだり、心身障害児の障害を克服する意欲にふれて、自分の生活の姿勢や学習の態度を反省したり、また、幼い子どもやお年寄りを含めて、自分たちの地域社会を構成しているすべての仲間に対して、思いやりの気持ちを育てたりするきっかけにもなります。
このような効果をもたらす心身障害児と健常児とのふれあいは、人生の早い時期に始めるほどよい効果をあげるといわれています。このように交流の機会を重ねることによって、心身障害児に対する誤解や偏見をなくし、正しい理解へと導くことができると考えられます。
心身障害児との交流活動を実践してきた小学校、中学校からは、「今まで見落としがちだった他人のよさに気がつくようになった」とか、「保護者から、相手の立場を考えることのできる人間に育てるために、交流を継続して行ってほしいという声が聞かれるようになった」、また、「交流の実践を積み重ねていくうちに、これは心身障害児に対する単なるお付き合いではなく、心身に障害のない子どもたちの人間形成にとっても得がたい機会であるという理解を示すようになった」などという報告がなされています。
このため心身障害児と健常児の社会性を育成し、人間尊重の精神の涵養を図るために交流教育を積極的に活用することが望まれます。
本年度、交流教育に関する指定校は、表1のとおりです。また、文部省指定の「心身障害児理解推進校」については、本年度が二年間の研究の開始年度であり、その成果が期待されます。
今回は、昭和六十一年度交流教育推進事業指定校の実践の成果の概要について紹介します。
表1 交流教育指定校一覧