教育福島0124号(1987年(S62)09月)-045page

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のごとを見ようとする」ことについて、五の段階として、「解決すべき課題を常に的確に把握することができる」、三の段階として、「解決すべき課題を常に求めようとしている」と、一の段階として、「解決すべき課題を与えられても、それに目を向けようとしない」とおさえ、以下同様に各到達目標について観察評価の尺度を設定しました。

評定尺度1)を用いて子どもの行動面に表れたものを評価すると同時に、子どもの内面的な心の動き、その変容を見るための自己評価項目を、十二のそれぞれの達成目標、すなわち望ましい状態像の各要素に合わせて評定尺度2)とし、小学校用、中学校用、高等学校用を作成しました。 (表2参照)

 

表2 自己評価票〈評定尺度2)〉(小学校用の一部)

表2 自己評価票〈評定尺度2)〉(小学校用の一部)

 

三、低くとどまっている三要素

県内研究協力校の児童、生徒を対象として、この評定尺度1)・2)により事前調査を行った結果、1)児童・生徒の自己評価と教師の観察評価は、ほぼ同様の傾向を示したこと。2)困難に立ち向かい解決するまで努力し続ける強い意志」及び「生きることに喜びを感じ充実した生活を送っている」の二つの要素については、小学校一年生から中学校、高等学校へと進むに従って次第に低下してくること。3)「問題意識をもってものごとを見ようとする」や「問題解決へのすじ道や方法などを見通して取り組む」及び「集団生活の中で他と共に自分を向上させる」という三つの要素については、各学年を通じ低くとどまっていること、等が明らかになりました。

この事前調査の結果をもとに、実践レベルでの取り組みの視点をより明確にとらえるため、実践段階に即した評定尺度を設定し、さらに調査を行いました。その結果明らかとなった陥没要素について、補完、強化するための指導の手だてを工夫し、継続した実践を行いました。

 

四、各教科及び特別活動等での研究実践

 

各学年で低くとどまっていた「問題意識をもつ」ことに関し、例えば、小学校理科の指導では、学習計画に児童のもつ疑問点や調べたいことを生かす工夫や先行経験と矛盾する比較事象を提示することにより問題意識を誘発することを試みてみました。また、別のクラスでは子どもの実態に基づいた学習コースを設定し、複線型の授業を展開してみました。中学校の技術科では学習のつまずきや不明な点とその解決策を中心とした学習記録カードの活用を図り、高等学校工業科の課題研究ではグルーブ討議を重視するなど、それぞれの研究実践で多様な工夫がなされました。

さらに自己教育力の育成については教科以外の領域における役割の大きさも重視しなければなりません。そこで小学校における集会活動、中学校の学級指導、高等学校での生徒会活動やホームルーム活動にも研究実践の場を求め、陥没要素の調査をもとに、その補完、強化に努めました。(くわしい実践状況についでは、県教委刊の本研究「中間報告」書及び教育センター刊「研究資料集 第10集」をご覧下さい。

 

五、おわりに

研究実践にあたっては、事前、事後の調査結果を当センターの大型コンピュータで処理し、集団だけでなく個人毎のダイヤグラム表示を工夫するなどコンピュータの機能をフルに駆使して行いました。研究実践の結果、小・中・高等学校の各学年とも全体的に自己教育力の育成を図ることができましたが、のび率は学年が進むほど低くなっていることが明らかになりました。

(表3参照)

 

研究二年目の本年度は、研究の焦点を個人に当て、陥没要素の要因を究め、その補完・強化に努め、自己教育力を育てる各指導段階におけるアブローチの方法を明確にしていきたいと考えます。

 

表3

表3

※横軸は学年、縦軸は評定値(五段階評価)を示す。

 

 

 


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