教育福島0128号(1988年(S63)01月)-010page

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特選入賞論文

 

確かな読みの力をつけるために言葉をどう取り上げればよいか

−説明的文章を中心として一

 

浪江町立苅野小学校教諭

佐藤 百合子

 

一、研究主題設定の理由

 

一、研究主題設定の理由

 

昨年度本校では、「確かな読みの力をつける学習指導法」というテーマをかかげ、説明的文章を中心にその方策をさぐってきた。その結果、児童の興味や好奇心を前面に押し出して授業を進めることの大切さが実証され、意欲的に取り組む児童の姿も見られるようになった。しかし、次のような問題点が浮かんできた。

○ ばく然とした印象的な読みからぬけ出せない児童が多い。

○ 何について書いてあるのかという中心話題や主題がっかめない。

○ 指示語・接続語の働きが理解されていない。

説明文の指導では、内容を追究する価値的目標と、読解するうえでの技能的目標とが、同時に追究できるように考えなければならない。文章構成や指示語・接続語などにこだわりすぎるのはよくないが、文の相互関係・段落の要点やまとまりなどが分かるために、きめ細かな論理的読みを進めていくことは、やはり大切であると考える。

山村地帯に生活し、語いのあまり豊富でない本校の児童にとっては、もっと語句や言葉に目を向け、大事なことを叙述に基づいて読み取らせたいと考え、本主題を設定した。

 

二、研究仮説

 

中学年における説明的文章読解の技能的目標の中心は、三年生では段落の要点の理解であり、四年生では段落相互の関係の理解である。これらは、読字力・語句の理解力・文法力などに支えられながら、段階的に培われていくものであると考える。

そこで、「確かな読みの力」を、

○ 段落の要点がまとめられる力

○ 段落相互の関係が分かり、意味段落にまとめることのできる力と考え、次のような仮説を設定した。一つ一つの段落が、毎について述べているかが分かれば、その視点一で全体を見通すことができ、確かな読みの力をのばすことができるであろう。

 

三、研究計画

(一) 第一次実態調査

○ 読解力診断テスト(低学年二〜四年)主題・詳細・推測・指示・批判

○ 読書力診断検査(小学校中学年三・四年)教研式全国標準A形式、読字力・語い力・文法力・読解鑑賞力

(二) 研究主題、研究仮説設定

(三) 第一次検証授業

○ 単元名 段落に気を付けて

教材

カブトガニ

キョウリュウの話

(四) 第二次検証授業

○単元名 段落ごとのまとまりをとら

えて

教材 ガラスの利用

(五) 児童の変容(第二次実態調査)

(六) 研究の考察とまとめ

 

四、研究の対象者

 

〇 四年一組 二十六名

 

五、研究の実践

 

(一) 児童の実態(第一次実態調査)

(1) 読解力診断テストから(資料1)

○ 主題読みに落ちこみがみられる。これは、何が書いてあるのかの大体の内容を把握し、中心となっている話題をとらえる力が不足していることを示している。また、文章の題は、中心話題と密接に関係しているという認識の低さも表している。

〇 一年間「確かな読みの力を育てる」指導をしてきたが、詳細読みの力も伸びきっていない。これは、文にもどって考えようとする態度の不足、文と文との関係を見ぬく力の不足によるものと考えられる。

(2) 読書力診断検査から(資料2)

○ 文章を読み取る力を、読字力・語い力・文法力・読解鑑賞力から分析すると、文法力の不足が目につく。これら四つは、国語の基礎的能力であり、その不足が明らかである。

○ 内容を概観する時は、文法的事項の理解が十分でなくとも間に合う。また、内容の話し合いでは事柄に注目がいき、文法的事項である指示語や接続語の働きなどには、あまり注意がはらわれていない結果であり、指導上の問題を表している。(詳細は略)

 

〈資料1〉 読解力テスト・分野別平均得点グラフ

 

 

 

 

 


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