教育福島0128号(1988年(S63)01月)-017page

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から始めた。二万五千分の一の地形図を用いて、地図記号の読み取りを指導し、道路や河川や植物分布などに注目させて田、畑、果樹園、桑畑に着色させた。必要に応じ、教師作成の土地利用図をOHPやプリントで示し個別指導を加えた。以上の作業と丹念な読図だけでもある程度郷土の実態に迫ることができるが、地図だけでは不明な点や疑問点を解決するために「実際に見に行きたい」という見学の必要感が高まってきた。

児童一人一人が自作の土地利用図を持ち見学へ出かけた。行程およそ四q約二時間である。途中、重要な所や伝えたい情報のある時は全員を集めて説明を加えながら歩く。一人一人が喜々として歩き、地図だけでは分からない種々の事実を目にした。(資料4参照)

 

〈資料4〉 見学メモ

科書にある我が国の土地利用の説明が、より説得力を増したものとなった。

 

各自のまとめの後、見学の要所ごとに見学をふりかえり、自然環境を基盤として社会環境が反映されている郷土の土地利用の実態を見つめさせた。こうした土地利用のつぶさな観察によって、教科書にある我が国の土地利用の説明が、より説得力を増したものとなった。

本実践をふりかえると、児童一人一人が興味を持ち関心を高めて学習に取り組んだといえる。また、児童の興味や関心は実に様々であることも再認識させられた。しかし、なんといっても、単元一の反省点であった見学の重要性の証左となった成果は大きい。

(四) S・児童の学びの姿の分析

(1) 「学びの姿」の分析  E

1) 学習課題の把握の面から

課題設定では、児童の認識をゆさぶることが大切で、課題の設定によって資料がほしいとか見学がしたいという追究意欲を喚起するようになる。今後、個に応じた綿密なゆさぶりが必要である。

2) 学習意欲や学び方の面から

児童は身近な事象に新鮮な驚きをもって学習に取り組み、注意深く郷土を見つめることの大切さを学んだ。

3) 学習の発展の面から

一例として、六月に実践した「くだものの里」を翌年二月に再認識した児童などもおり、郷土の学習は児童の既有の郷土観を様々に刺激するものだと改めて感じた。

(2) 「授業についての調査」の分析

「わかる」そして「楽しい」授業を展開したいという教師の願いが、望ましい学びの姿となってあらわれてきた。(資料5参照)五 研究のまとめ

 

(一) 研究の成果

(1) Pの面から

今回の教材開発の仕方は妥当であった。教師自身の身近な素材群に向ける目が養われてきた。また、本報告のうち土地利用は、地形図さえあればどの地域でも教材化が可能である。

(2) Dの面から

地域教材を開発すると「教えたくなる教材」になり、指導技術を越えて児童とともに楽しく実践ができた。

(3) Sの面から

「『自分たちの飯坂だから、知らないことなんて……』と思っていたけど、まだまだ知らないことがたくさんあった。」という言葉は、児童の中に郷土をより深く見つめようという力が育ってきていることを集約して示しているといえる。

(二) 今後の課題

(1) 児童の興味や関心や疑問を大切に柔軟生とゆとりをもって、単元を展開していく必要がある。

(2) さらに実践を積み重ね、よりよい教材の練り上げや他単元および他学年においても地域教材の開発に努め、身近なところがら、一歩一歩郷土の教育を進めていく必要がある。

 

〈資料5〉 社会科の授業についての調査

○「楽しいですか」

○授業(教師)への要望…()は要望者数

 

○授業(教師)への要望…()は要望者数

 

 

 

 

 


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