教育福島0128号(1988年(S63)01月)-019page

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5) 研究対策の実践方法〈資料1〉

 

1) 児童が自ら問題意識をもつ導入時の事象提示の工夫

 

児童が理科授業を楽しみながら、主体的に取り組むようにするためには、これから始まろうとしている学習活動に対して、楽しい、わくわくする期待感を授業の導入部で抱かせることが大切だと考える。

児童に「自分が活動して見つけた問題を解決したい。」という意欲を持たせるために、導入部において、事象から問題をとらえる実験や観察の場を設定すれば、児童は事象に対して、驚きや意外性を感じ、さらに疑問や好奇心を抱いて、学習に意欲的に取り組むようになるであろうと考え、実践した。

 

2) 『書く』活動の指導

 

事実からの思いつきや整理されていない発表をいくら行っても、科学的、論理的思考力は身に付かないように考えられる。

そこで、口答に代わる発表の手段として、書く活動を採り上げ、この対策の見通しを次のように考えた。

1) 事象に基づいた推論をするには、口答による発表や相談よりも、書くことによってイメージ化や文章化を図った方が筋道を立てて考えられるようになるであろう。

2) 予想から実験、そして結果・まとめとものの見方・考え方がどのように変化したかを記録することは、科学的な処理の仕方と思考力を高めるために有効な手だてとなるであろう。

 

3) 学習の複線化

 

児童がとらえた学習問題から共通課題を設定し、その共通課題の解決方法の複線化を図れば、児童は自分の能力や発想を生かせる方法を選択して、自分から進んで解決活動に取り組むようになるであろうと考え、次のような対策の見通しを立てて実践した。

1) 学習速度・達成度の個人差に対応できるように、課題解決方法に難易度の差を付け、児童が自分にあった方法を選びながら、解決できるようにすれば、児童は積極的に解決活動に取り組むようになるであろう。

2) 学習形態を児童の必要性に合わせて変えても、活動が十分できるように教材を準備し、多様な問題解決活動ができるようにすれば、児童は一人学習で自分の考えを確かめたりグループで情報を交換し合ったり、協力して解決したりして、主体的に学習に取り組むであろう。

 

4) 教材の開発と教育機器の活用

 

理科学習では、教材や教具の数が児童数に対して少ないために、学習の範囲を縮小せざるをえなかったり、天体のように教材が広すぎて、とらえにくかったりして、児童の学習意欲が高まらなかったり、深まらなかったりする場合がある。

そこで、児童が積極的に教材にはたらきかけられるように、教材や教具の数を児童の実態に合わせて開発できるようにした。

また、直接体験できない学習に対しては、VTRや十六ミリフィルム、コンセプトフィルムなど視聴覚教材を有効に活用した。

 

5) チェックリストによる児童の学習状態の把握

 

1)〜4)の対策が児童の理科学習の能力や意志・態度の向上にどう役立ったか、そして、単元の学習内容をどの程度理解しているかを把握すると同時にフィードバックの必要性を判断する資料にするために、単元の指導計画の中に実施時期を表記し、児童に形成的評価の役割を説明した上で学習進度に合わせて、学習診断テストを行った。

実施方法としては、事前テストで作成した二十問程度の問題を解答せずに形成的評価一回目・二回目、総括的評価として活用した。得られた児童の解答結果の分析では、児童一人一人の解答を設問毎にを判定して正答率を出し授業の観察結果の両面から児童の変容を考察した。

 

三、研究の実際

 

ここでは、メダカの成長、植物の成長の単元で検証した各研究対策の実際について述べる。

対策一の実際「メダカの卵の成長」

 

〈資料1〉 研究対策の図式

単元の学習以前に潜在する児童のレディネス

単元の学習以前に潜在する児童のレディネス

 

 

 

 


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