教育福島0128号(1988年(S63)01月)-022page

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特選入賞論文

 

個性を生かす学習指導

−自己学習力を育てるための個別化学習の推進−

 

三春町立岩江小学校

代表校長野村裕子

 

一、はじめに

 

本校は昭和六十年度に、オープンスペース・スクールとしてスタートしたのを機に、これまでの児童の前に立ちふさがる教師のあり方を反省し、一人一人を生かす教育を志向して、「一人一人に自己学習力を育てる」ための授業改革に取り組んできた。

具体的には、「指導の個別化」と「学習の個性化」の二つのアプローチを組み合わせた授業のあり方を追求し、研究教科の幅を広げながら実践の積み上げに努力してきた。

ひとつの教科、ひとつの領域を対象にした微視的・断片的な研究や実践からぬけ出し、学校の教育活動のすべてを研究の対象とするところまできた。

ここに紹介するのは、昭和六十一年度からの教科指導を中心にした共同研究の記録であり、一人一人の個性を重んずる教育の実践に取り組んできた授業の記緑であるとともに、教師自らの自己変革の歩みでもある。

(一) 二十一世紀に向けての教育の課題から

国際的な視野から日本の教育の課題をとらえたものとして本年の例をあげてみると、日米両国の教育制度や教育改革についての報告や、IEAの第二回国際数学教育調査、それに、国立京都国際会館で開催された教育サミットなどがあげられる。

これらの内容は、いずれもわが国の教育水準の高いことを評価しながらも、わが国の教育の問題点について指摘し、これまでの効率性を考えた教育から、一人一人の個性を重んずる教育に転換していくことの必要性を説いているものと受け取れる。

一方、国内においても教育改革については論議されてきたところであるが、臨教審の最終答申を読むと、「個性重視の原則」が教育改革の最も重要な基本的な考えとして示されている。また、教育課程審議会においても、「社会変化に対応する教育内容のあり方」について検討され、「個人差に応じた教育のあり方」などについての資料が提供されている。

こうしたことを総合して考えてみると、二十一世紀に向けての教育の課題は、個性重視の教育を推進し、創造性に富んだ主体的な子どもを育てていくことにあると考える。

(二) 三春町の教育方針と本校の課題

三春町教育委員会は、二十一世紀を志向する新しい教育創造の基本方針として、「個性教育の回復」を第一にうち出している。

その教育を保障する条件整備のひとつとして、本校が建築されている。

本校の教育目標は、「豊かな心で学ぶ子ども」を理想像に、三つの具体目標を掲げているが、その根幹にある理念は、一人一人を大切にし、その個性を生かした教育にあたることである。

素直で明るいが、やや消極的で受動的な子どもたちを、「ひとり学び」のできる主体的な子どもに育てることが、本校の大きな教育課題でもある。

それには、今の学習指導のあり方を根本的に見なおし、一人一人に対応した授業へと脱皮していくことが大切であると考えた。

主体的な子どもを育てるには、教師中心の授業ばかりでなく、児童の側に立ったものでなければならない。

現実的には、一斉指導を主体としたこれまでの授業形態を改革し、一人一人に主体的に学ぶ意志や態度を育てることが、本校の課題でもある。

 

二、 研究主題の分析

 

(一) 自己学習力を育てるとは

一人一人の個性を生かし、個性を育てる指導は、一人一人に主体生や創造性を育てるものであるが、それは「自ら学ぶ意志・態度・能力」を育てることでもあり、本校では「自己学習力」とおさえた。

学習は、その子ども独自の行為であり、「学ぶ」ということは、子どもの能力や興味・関心に応じた対象に、主体的にかかわる過程である。

自分で計画し、自分で修正しながら目標をめざして努力していくなかで、自己学習力は育つのである。

だから学習は成果よりも過程が大切であり、学習は個に成立することを原則とする。一斉指導の大切さを認めながら、一人学びの学習、個別学習をよ

三十一ぺージに続く

 

共同研究をすすめた岩江小学校の先生がた

共同研究をすすめた岩江小学校の先生がた

 

 

 

 


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