教育福島0128号(1988年(S63)01月)-030page

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多分死んだのかも知れません。又吉は大人になった猫なのに、親のトラ太は一日一回、又吉の巣のところに行っては子の又吉の姿を求めて、悲しい声で鳴いています。この姿を見ると本当にかわいそうになります。

人間は、言葉を使って自分の考えを相手に伝えたり、相手の考えを知ることができますが、猫は、ただ鳴くことと、お互になめ合うことによって親子の関係を深めているように思えてなりません。その時々によって鳴き方もちがい、なめ方もちがいます。特に、よそのメス猫が来た時などは、子猫の一匹がすごい声で鳴いて親猫に知らせると、親のトラ太がとび出してきて、親子でよその猫に立ち向かって行きます。

その時の団結力にはすばらしいものがあります。親猫は子猫のために捨て身でぶつかっていき、退散させた後はお互いに体をなめ合っています。人間の場合だったら「よくがんばったね」といって喜んでいるように思われてなりません。

トラ太家族とのふれあいの中で、私共家族は、他人に対しての思いやりの心と、猫という共通の話題を中心に、親子のふれあいも、円滑にしてくることができました。これからも、何年続くかわかりませんが、家族全員でトラ太親子との長い長いふれあいを願っています。

(白河市立白河南部中学校長)

 

病気をして

渡邊博之

 

任校へ赴任した時、自分が病気で学校を休むなどとは思ってもみませんでした。

 

今年四月、現任校へ赴任した時、自分が病気で学校を休むなどとは思ってもみませんでした。

前任校では、四年間専科でしたので久しぶりの学級担任。しかも、六学年なので、自分の出来る限りのことをこの一年間という限られた期間の中にぶっつけなければならないと思い、無我夢中で二か月が過ぎようとした日のことでした。春の運動会が無事終了し、安堵感と快い疲労感で床に着いた時、急に右脇腹に痛みが走ったのです。二時間ほど我慢していたのですが、痛みが治まらず、深夜、病院に入りました。

診察の結果は、「水腎症」ということで即入院。そして、三日目のことでした。担当医から、強いショッキングな言葉を聞かされたのです。「あなたの水腎症は、先天性尿管狭窄が原因です。先天性なので、多分左側の腎臓も同じようになっているでしょう。二つとも取り除くようになるかもしれません」こう言われた時、私の目の前は、真っ暗になってしまいました。「腎臓を二つとも取るようになれば、体力的にもう子どもたちと活動できない」「教師を続けることは無理」「どうしたらいいんだ」などという思いが脳裏を走り、担当医の後の説明はもう何も耳に入りませんでした。

夜、床についても全く寝つけず、思い浮かぶのは子どもたちのことばかりです。「六年生らしく生活しているだろうか」「途中で教師をやめれば、子どもたちに一番迷惑をかけてしまう。せめて卒業まで、手術を延ばすことはできないだろうか」…。また、不思議に今まで自分が勤務した学校の様子やその時の出来事が鮮明に思い浮かび、「あの時はこうすればよかった。もっとこんなことはできなかっただろうか」という後悔の念でいっぱいになるのです。

そんな眠れない夜が二晩続いた次の日、再び担当医に呼ばれました。「やっぱり二つの腎臓を取ってしまうのか」と思いながら診察室の戸を恐る恐る開けました。「渡邊さん、幸運ですよ。左側は正常です。しかも右側も一部分の切除で治りますよ」私は、思わず目頭が熱くなってしまいました。「子どもたちと一諸に活動できる」「教師としての仕事が続けられる」「よし、早く治そう」私はこの時ほど自分が教師であること、子どもとともに活動できることへのよろこびを強く感じさせられたことはありませんでした。

今回の体験が、教職七年目の私に気づかせたことは、無意識のうちに教師でいることを当然のように感じていなかったか、子ども(人)の心の動きをとらえ、感じ、理解して指導助言していたか…ということです。そして私の心に変化をもたらしたあの医師の一言を子どもたちに置き換えることにより、一人一人の子どもの心をゆさぶる私自身の一言を工夫していきたいと思います。

(新地町立新地小学校教諭)

 

寒さの最も厳しい時節です。ウインタースポーツで汗を流したその後は静かに読書というのはいかがですか。

県立図書館では次の日程で巡回を行ないます。多数ご利用ください。

 

親子読書文庫巡回

二月二日〜四日 相双・いわきコース

二月九日〜十二日 県北コース

二月十六日〜十七日 県中コース

移動図書館「あづま号」巡回

二月十六日〜十九日 相双コース

二月二十三日〜二十六日 田村コース

 

※問い合せ先

県立図書館・振興課

◆〇二四五(三五)三二一八

(内線二四二)

 

 

 


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