教育福島0128号(1988年(S63)01月)-045page
レーシングペーパーがよい)
(b) 間接描画法
・コロンペーパー(転写紙)に描画し、版に写しとる。(子どもの“うつし絵”あそびの要領で、版面に水をひき、描画面をふせ、その上に新聞紙をのせ、プレス機にかけ版面に密着させる。コロンペーパ一の裏面に水分を与え、プレス機に数回かけ転写する。コロンペーパーは半透明の薄い紙に糊を塗布したものである)
(4) 確実な版づくりのため製版」をする。((「チンクター返し」)
・クレヨンなどの描画材がアラビアゴム液の塗布により、版として成立したのであるが、インク盛り、プレス機の圧力などに「版」は不安定である。特にクレヨンは、版面の凸部に付着しているため剥離が心配である。そのため描画材と盛りかえする。(野球ゲームのリリーフ投手の役割りと同じであり、主成分はアスファルト・ピッチである)次の三つの方法がある。
(a) 湿式法
ア) 版面にアラビアゴム液を塗る。
バット処理(硝酸塗布)の版面がアラビアゴム液により、描画部の脂肪と化合、他の部分は硝酸と化合する。描画部は親油性、水分の反発。他の部分は保水性が増大する。
イ) 版面のアラビアゴム液を水で洗いおとす。
ウ) 揮発油をかけ、描画材を洗いおとし、絶えず水を版面に与えながら、布でチンクターをすりこむ。
揮発油で洗いおとすと、描画部は消えるが、チンクターをすり込むと描画部はセピア色に再現する。水分がないと、描画部以外にもチンクターが付着する。
エ) 製版インクを盛る。
版面に水分を与えながら、ローラーに少しずつ均一にインクをつけ多少力を入れ、多方向から転がす。(製版インクは、黒色で製版墨ともいう「刷りインク」にくらべ顔料の粒子が細かく、粘性も強い。版を確認する意図もある。乾きにくいので版の保存にも使用する)
オ) 版の汚れ、描画の不用部分を除去する。
浮石棒、砂ケシゴムで消す。加筆は困難であり、描画の段階が大切である。
カ) アラビアゴム液を塗る。
(b) 乾式法
ア) アラビアゴム液を塗る。
イ) 揮発油で描画部を洗いおとす。
他の部分はアラビアゴムが保護している。(水分のない布使用)
ウ) チンクターをすりこむ。
エ) 水洗いにより、アラビアゴム膜を洗いおとす。(油脂分のついていないスポンジ使用)
オ)湿式法のエ)〜カ)に同じ。
(c) 中間型法
この方法が安全で失敗も少ない。
ア) アラビアゴム液を塗る。
イ) アラビアゴム膜を水で洗い落とす。
ウ) 再度アラビアゴム液を塗り、乾かないうちに、乾いた布で描画部を「から拭き」する。描画部はアラビアゴム液をはじ、くが、細かい描画は、ゴム膜に覆われたり、ゴム液の粘性が強く、描画部に付着することもある。
エ) 版面に揮発油をかけ、乾いた布で描画材を拭きとる。
オ) チンクターをすりこむ。
カ) 版面を水洗いし、アラビアゴム膜を除去する。
キ) 版に水分を与え製版インクを盛る。
ク) 版の汚れの除去。
ケ) アラビアゴム液を塗る。
※ 三つの方法とも「アラビアゴム液」「水」「チンクター」のそれぞれの性質を理解していることが大切である。専門的には、多くの枚数を刷るなど、より安定した「版づくり」のため数回製版を繰り返す。
(5) エッチングプレス機で刷る。
ア) 版面のアラビアゴム膜を水で洗いおおとす。
イ) 版面に水分を保たせ、揮発油で「製版インク」を拭きとる。
ウ) 水を含んだスポンジで版面を湿らし、準備した「刷りインク」を口一ラーで盛る。
・製版インクを盛る要領と同じ。
エ) プレス機に版面を上にしてのせる。
オ) 紙をのせ、あて紙をのせる。
カ) プレス機の圧力を確かめ、プレス機を通す。
・エッチングより圧力はやや弱めでよい。
・一、二枚は、版とインクのなじみがよくないこともある。
・インクの付着が過多であったり、版面の水分が多いまま刷ると、にじみ「泣く」が刷りに生じることがある。
四、研究のまとめ
いわき地区高校教員六名で研究をすすめ、県教育センターでの研修の延長として、「身近かなもの」を利用した「リトグラフ」、教材化の方法など探ってきた。最も原始的な技法が最も進歩した形となったのが「リトグラフ」であることに改めて感心し、表現の方法(描画の技法は紙面の関係から省略)に無限の可能性を秘めた技法であることも、グループ研究を通し学ぶことができた。
これまで他の版画(版種)にくらべ実技教材として難があったが、今後、おおいにとり上げられるべき教材であると考える。