教育福島0131号(1988年(S63)06月)-008page
特集1
養護教育の推進
障害の克服・改善と自立をめざして
養護教育課
一 はじめに
(一) 養護教育の歩み
盲・聾・養護学校の小・中学部は、学校教育法制定当時一昭和二十二年)からこれを義務教育とする建前がとられたが、学校の整備等の関係により、小・中学校より遅れ、昭和三十一年度に至って盲・聾学校の義務制が完全実施をみた。また、養護学校については、ようやく昭和五十四年度に義務制が施行されるに至った。
これによって、従来、学校教育を受ける機会を提供されていなかった精神薄弱、肢体不自由又は病弱の子どもたちに対してもその障害に応じた適切な教育の場が確保されることとなった。これに伴い福島県の就学義務を猶予・免除された者は、昭和六十二年度にはわずか十名をかぞえるのみとなった。
この間、県教育委員会においては、児童福祉施設や病院と提携した養護学校を次々と設置する一方、昭和五十八年度にはいわき市に通学制養護学校を設立した。また、小・中学校には、肢体不自由を除き、障害の種類に応じた特殊学級が設置された。このため、障害児の教育機会は、著しく拡充された。
また、教育内容・方法については、交流推進事業や重度・重複障害教育研究校の指定を県単独事業として実施する一方、文部省の指定事業を導入してその充実を図ってきた。更に、教職員の資質の向上を図るため、特殊教育内地留学等、専門研修派遣事業をはじめ、障害の種類や程度に応じた研修会・講習会を開催し教職員の研修の充実に努力してきた。昭和六十一年度には、郡山市に福島県養護教育センターを設立し、教育内容・方法の開発、教職員の研修、就学相談等を実施するに至り、養護教育の充実を図るべく体制を整えてきた。
(二) 本年度の重点施策
「社会参加をめざす養護教育の推進」を重点施策に掲げ、1)教育課程の改善・充実、2)重度・重複障害教育内容の充実、3)交流教育の推進、4)生徒指導の充実、5)進路指導の充実、6)教職員研修の充実、の六つの重点項目を設定した。
特に本年度は、養護学校教育義務制施行十周年を記念し、心身障害児童生徒作品の表彰や教職員の研究論文の表彰を行い、児童生徒の学習意欲を高め、教職員の意識の高揚を図る等の事業の実施とともに、盲・聾・養護学校や特殊学級の教育課程の改善をはじめ、指導の質的向上を図りたいと念願している。
次に、指導の重点から「教育課程の改善・充実」「重度・重複障害教育内容の充実」「交流教育の推進」「教職員研修の充実」について述べることにする。
二 教育課程の改善・充実
(一) 教育課程の編成
児童生徒の実態を的確にとらえ、その実態に応じ弾力的に対応できるよう従来の教育課程を見直し、改善を図る必要がある。
1、児童・生徒の実態
盲・聾・養護学校の児童生徒の障害の種類や程度は、重度・重複化が進行し、在籍児の状態も多様化している。
例えば、盲学校においては、精神薄弱、肢体不自由、青緒障害などの他の障害を併せもつ児童生徒が入学し、また中途失明者で高学歴の者、就労経験者、既婚者など多様な生活歴をもつ生徒が在籍するようになってきている。
病弱養護学校においては、ぜんそく、腎疾患、心疾患、脳性まひ等五十種類以上の疾患を有している。また最近は、登校拒否の児童生徒も転入するようになってきている。
また特殊学級においても自閉症児や情緒障害を持つと思われる児童生徒が目立つようになってきている。
2、教育課程の編成
教育課程の編成、改善に取り組むに当たって、教育課程の基準についての共通理解を深めることが大切である。
養護教育は本来、教科書や指導書に添った授業が困難である。それだけ、盲・聾・養護学校の学習指導要領の示