教育福島0131号(1988年(S63)06月)-019page

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として家庭でしっけられることが望ましいものや、学校や地域社会の特性に応じて指導されることが望ましいものもあるが、特に学校で指導しなければならない基本的な生活習慣として、次の事柄が大切である。

(一) 生命尊重、健康・安全に関すること

不節制や無謀な行動等によって生命を失ったり、粗暴な行為によって他者を傷付けたりしないこと。手洗いなどの衛生的習慣、食事のマナー、事故、安全に関する注意と身体的対応に関すること等。

(二) 規則正しく、きまりよい生活に関

すること

1) 物・金銭の活用及び自他の物の区別に関すること

2) 時間に関すること

3) 学習に関すること

(三) 礼儀作法、社会生活に関すること

1) あいさっと言葉遣いに関すること

2) 身だしなみ、身の回りに関すること

3) 自己及び他者を人間として大切にする心情や態度

4) 規則を守ること

5) 公衆道徳に関すること

なお、習慣形成における指導上の留意点としては、教師の指示・命令により一方的に押しつけるのでなく、これら基本的な生活習慣の意義を理解させ、状況に応じて自ら身につけていけるように、継続的な指導が大切である。

 

二 共感的人間関係を深める生徒指導

人間が自分の目標を立てて、それに向かって努力しても、その目標を達成できるとは限らない。その過程において、同じような人間的な弱さや不安を自覚した者同士が出会い、経験を語り合うことによって心は開放される。このようなお互いにありのままに自分を語り、共感的に理解し合う人間的ふれ合いが基盤となって、はじめて生徒指導の成果が期待される。

例えば、授業の中でグループ学習をするとき、できるだけ相手の考えをよく聞いた上で自分の意見を主張する。これまであまり発言しなかった仲間が挙手していれば、チャンスを彼にゆずる。また、係活動などで、自分の役割を果たすことはいうまでもないが、みんなの了解を求めて相手の分担した仕事にも積極的に協力する。相手の悩んでいる問題を他人事としないで、その問題に自分もかかわらせて相手とともに解決に取り組む。いじめなどの問題で、知らないふりをしたりするのでなく、そのいじめの問題に自分もかかわるものとしてとらえて、学級や全校で解決すべく自分から積極的に活動する、といったような態度を育成する指導を行うことが大切である。

 

三 自己決定の場を与える生徒指導

すべの教育活動の中に、児童生徒が自己決定できる場と機会を与えることは、特に重要である。例えば、各教科の授業では学習課題を選択したり、自分なりの方法で調べたり実験したりするといった活動ができるよう配慮する。また、学校給食の場では、一緒に食べる相手とかかわりながら、自分の体調や活動量を考えながら食事の量を決定するようにしたり、清掃においては、清掃の場所を自分で決めて実行するというようにする。

ここで大切なことは、自ら決断した行動に対して責任をとるよう指導することである。選択の自由は責任のとれる範囲内で認められるものである。そして、行動選択の基本については、他の人とのかかわりを考え、他者の人格を損なうような行動は許されないことなどをしっかり指導することが大切である。

 

四 自己存在感を与える生徒指導

人間は他者とのかかわりの中で生きており、そのかかわりの中で自己の存在感を見い出せる時、生き生きと活動できるのであり、自己実現を図ることができる。一人一人が例外なくあらゆる学校生活の場で自己存在感を持つことができるよう配慮することが重要である。そのためには、例えば、毎朝一人一人の顔を見ながら名前を呼んで出席をとり一声をかける。全員のネームプレートを黒板のすみに用意して、板書した応答のところにそれを置くことで、発言した児童生徒の存在が認められる。発問についても、知的内容にかかわる発問だけでなく、感性や経験などに訴えるように工夫することによって全員が応答できるようになる。

特別活動は、各教科の時間よりも多様で、統合的な活動であるため、児童生徒一人一人が、自分の持ち味を十分に発揮して、仲間から存在を認められたり賞賛されたりするチャンスが多い。日ごろの学校生活では、ほとんど目立った能力を発揮しえない児童生徒が、少年自然の家での集団宿泊訓練などで、教師や仲間の目を見はるような活動をして、友達から賞賛されて、自己存在感をしっかりと持つという体験をすることもしばしばである。

 

以上述べたように、生徒指導は児童生徒に自己存在感を与え、共感的人間関係を育成し、自己決定の場を与えてその可能性の開発を援助することを通して自己指導能力の育成を図ることといえる。

次のページ以降に紹介するのは、生徒指導研究校の指定を受け、昨年度研究発表を行った学校の内容である。各学校の実践の参考にしていただきたい。

 

 

 

 

 


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