教育福島0131号(1988年(S63)06月)-032page
心な態度が目立つ。特に相手を尊重し、協力して活動することや、共感的な心情も不足している。やればできるという意欲と、それに取り組む積極さがみられない。
このような現状からは、自分のもっている可能性を具現化しようとする心は芽生えてこない。そこで、生徒の生活に喜びを持たせ、自己の生きがいを味わわせることをねらい、学校生活での教師と生徒、生徒と生徒との人間的な触れ合いから、意欲が芽生え、その芽生えが喜びとなって、よりよい方向に変容していくことを願いこの主題を設定した。
二 研究主題についての基本的な考え方
生徒指導の研究を進めていくためには、教師間に「生徒をよりよくしよう」という意識の盛り上がりが不可欠である。そのためには教師の本音を出し合い、生徒指導上での問題を十分認識し、それをどう解決していくかという積極的な解決姿勢で取り組むことが重要である。
◎ 日常生活の改善をめざし、今までの本校の教育活動を見直していく研究実践をする。
◎ 教師と生徒・生徒相互の好ましい人間関係を形成するための方法を工夫する。
◎ 「生徒が変容するにはまず教師が変わらなければならない」という原則から常に前向きに取り組んでいく。
◎ 自己実現(生きがい)を、人間的な触れ合い一認め合い)の中で図っていく。そのため、学校生活の中で触れ合いの場と主題にせまるための構想として具体的な方策により実践する。
三 研究の概要
生徒の指導は生徒の理解に始まり、生徒の理解に終わるという理を根底に、一人一人の生徒の理解を、あらゆる角度からの客観的な資料の収集とそれらの資料の整理と統合を図りながら、確実に行うことが重要である。
これらに対する一つの提言として、大規模校という特性を十分にふまえ、ややもすると学級担任の机の中に眠っていがちな各種のテスト調査、資料の共有化を図る一つの方法として、コンピュータを利用した生徒理解のための資料の作成と、それらを積極的かつ有効に活用する方策を検討し、これら個々の生徒の理解に立脚した学級集団の特性に応じた活動を実践していく。
(一) 研究組織を基礎資料作成部、指導法検討部、指導実践部に分け、各部を有機的に関連させながら活動を進める。
(二) 生徒理解個票を全生徒分作成し、コンピュータに入力する。
(三) 入力されたデータにより、学級、学年集団の各種の調査の特性の検索をする。さらに、特性の検索により学級づくりのための有効な資料の作成と指導法をさぐっていく。
(四) 「学級づくりの具体策を次の観点から行う。
1 構成的グループ・エンカウンターを取り入れた実践活動
2 学級目標、学級スローガン、個人生活目標の設定
3 学年毎に形式内容を工夫し印刷製本して作成した教師と生徒の交換日記の指導
4 教育相談を通した教師と生徒との心の交流
5 学級係活動の活生化
(五) 学年経営、学年集会、各種集団活動、生徒会活動の実践を通し、自己実現の場と機会を作り、有効な方策の検討を進める。
四 研究実践
基礎資料作成部
(一) ねらいと見通し
生徒指導における生徒の理解の立場は、より多くのことを、より深く知ることを通して、人間的に理解し合える関係を一層深めるところにある。
さらに教育活動の多くが、学級や学年等の集団を中心に展開されがちであることから、生徒の理解も、個人的な理解だけでなく、集団生活の中での適応状況も知らねばならない。さらに指導・援助をするためには、教育や成長の背景としての生育歴、環境などを各種の検査、調査、日常観察などを通して正確に把握し、理解することが必要である。
また、指導法検討部会との関連において、種々の実践に生きる具体的方策を作成し、一人一人に即した指導援助を積み重ねていけば、その過程の中で生徒は、自己を見つめ、自己実現の意欲に向かう姿勢が育成されていくものと考える。
しかし、個々に実施されている検査や記録が、学級担任や係個人の目にしか触れなかったり、生徒指導の機能的な働きとして、有機的に結びついて活用されていないのが現状であろう。そのためにもコンピュータを活用し、資料の整理と分析がなされることは、よりよい指導法の考察が行われる一つの手だてになるのではないかと考えら、れる。
(二) 主な実践内容と方法
1 個票作成の基礎データを次の内容とし、必要に応じて加除訂正をする。
○学年、組、番、○氏名 ○生年月日 ○出身小学校 ○生育歴○保護者の関心の状況 ○性格検査類型 ○問題性傾向 ○学習意欲態度 ○学力偏差値 ○テスト結果 ○教科の好き嫌い ○健康状況 ○行動の傾向 ○交友関係とその特徴 ○日常観察事項
2 調査し作成するもの
○生育歴 ○生格検査 ○塾、アルバイト調査 ○ソシオメトリッ