教育福島0131号(1988年(S63)06月)-044page
養護教育センター通信
心身障害児の適正就学の進め方に関する研究
−学校生活における適応状況−
一、はじめに
養護教育センターでは、所員の共同研究として、昭和六十一年度と六十二年度の二年計画で、「心身障害児の適正就学の進め方に関する研究」を進めてきました。
この研究は、本県の心身障害児の適正就学に関する実情を明らかにするとともに、適正就学の望ましいあり方、進め方の方向を探ることをねらいとして、実態調査と教育の両面から、取り組んできました。
ここでは、第二年次の実態調査の結果について報告します。一第一年次の結果については、本誌一九八七年六月号で報告しました)
研究第二年次は、特殊学級及び通常の学級に在籍する心身障害児の適応状況について、県内の小学校の中から、四十校を抽出し、学級担任を対象にアンケート調査を実施しました。
この調査結果の中から、特殊学級及び通常の学級に在籍している心身障害児が、どのような適応状況にあるかについて、以下に述べてみます。
二、調査の対象
今回の調査は、会津教育事務所及び相双教育事務所管内の小学校の中から、それぞれ十九校と十二校を抽出したほか、他の教育事務所管内の中からも、同一校に複数障害種別の特殊学級を有する小学校九校、合計で四十校を対象として実施しました。
対象校からは、総数二百九十名の心身障害児について、学級担任から回答がありました。その内訳は、特殊学級在籍児が二百六名一七十一%)で、通常の学級在籍児が八十四名一二十九%)でした。その障害別、所属学級別、学年別の人数は、表1のとおりです。
三、調査の内容と方法
調査項目は、表2のとおりで、学校・学級における生活、集団参加・対人関係・遊び・コミュニケーション、学習に関するものです。これらの項目について、(1)できる(わかる)(2)内容・場面で異なる(3)できない(わからない)等の選択肢による回答と、自由表記による回答を求めました。
四、調査の結果と考察
(1) 調査項目別にみた適応状況
図1は、9)〜31)20)項目に対して「〜できる〜わかる〜している」等と評価された比率を、心身障害児の在籍学級別に示したものです。
このグラフでは、特殊学級在籍児のほうが「できる」等と評価された比率が全般的に高く、通常の学級在籍児よりも現在の学級により適応していることを示しています。
次に、下位項目でみてみると、通常の学級在籍児では、9)〜12)の生活面において、特殊学級在籍児よりわずかではあるが「できる」と評価された比率が高くなっています。ところが、13)〜23)の集団参加・対人関係・遊び・コミュニケーションや、24)〜29)の学習面では、逆に、その比率が低くなっています。この結果と、30)、31)の総合評価を比べても、その傾向は一致しています。このことから、通常の学級在籍児は、生活面ではあまり手がかからず適応できているとみられますが、集団参加等や学習面になると、心身に障害のない児童と比べて、指導に手間どるため、適応できていないとみられているようです。
更に、通常の学級在籍児の中には、学習面で、現在の学級においては、進んで学習したり、落ち着いて学習する態度がなかなか身につかない児童もかなり認められます。これらの児童については、指導の工夫及び、より適正な就学のあり方について見直す必要があるようです。
なお、特殊学級においても、学習面での適応困難な児童が認められるので児童の実態に応じた教育課程の再吟味や指導法の工夫が更に必要であると考えられます。
(2) 市町村就学指導審議会での判断別の適応状況
表1 心身障害児の障害別、学級別、学年別の該当児数