教育福島0139号(1989年(H01)06月)-043page

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にした。

この結果は、「できる人はより力がつくし、できない人はやり直しがきく、みんないっしょに学習していてわからないといっているよりはいいと思う。個人の理解力が深まるのも一つの利点だと思う。一単元終了後の生徒の感想文より)」というように、個人差に応じた学習方法・形態としてかなり有効なもので、しかも自ら選択した課題を根気強く考えて解決しようとする生徒が多く見られ、今後の授業の在り方に一つの方向を見出すことができた。

3 実態把握の工夫

(1) 診断的評価と自己評価

個に応じたきめ細かな指導を実現するためには、生徒一人一人の学習状況などを的確に把握しなければならない。

また、指導の成果を絶えず教師自身も認識し指導法の改善を図りながら毎時間の指導に努めなければならない。そこで、毎時間機会をとらえて診断的評価テストを実施した。また、生徒にも自己評価をさせることによって、指導の成果を明らかにし、これらの結果を反省しながら、指導法などの改善に努めた。

この結果、生徒一人一人の学習状況が把握でき、指導の成果も明らかにすることができた。また、追指導も容易に行うことができるようになった。

(2) 座席式指導案による展開

個に応じたきめ細かな指導をするためには的確な実態の把握が必要である。そこで、資料2にある座席式指導案により授業を実践することにした。これは毎時間、生徒一人一人の学習の成果や思考の流れなどを記録し累積していくことにより、より確かな実態の把握とそれに応じた指導を容易に行えるように考えた指導案である。本時の授業実施後に記録し、この記録をもとにして次時の指導案を練り、コース別学習の課題を作成するなど、個に応じた学習指導を展開する上でたいへん有効なものとなった。

この指導案に基づいて授業を実践した結果、教師のはたらきかけが能率的に正確に行えるようになった。すなわち、生徒が『見える』ようになったことが大きな成果である。また、「できた」「わかった」という喜びを多くの生徒に味わわせることができ、学習における生徒の基本的欲求に十分に応えることができたと思われる。

 

四、研究の成果と課題

本研究の成果は、資料3に有効度指数によって明らかにされているとおりである。表からいえるように、本研究は基本を定着させるためには十分効果的な研究であったと思う。特に上位、中位グループにはその効果がよく表われている。ただ下位グループについては効果がよく表われたとはいえず、今後も改善し継続して研究に取り組んでいきたいと思う。成果と課題については次のようにまとめることができる。

1 学習計画表を意図的に活用したことにより、学習のめあても把握して授業に臨む生徒が多くなり、課題追究意欲や継続意欲を高めることができた。しかし系統性をより具体的にするなど、生徒が真に活用できるものに改善する必要がある。

2 コース別学習によって積極的に課題を解決しようと学習に取り組む生徒が多くなった。しかも個別化を十分に図りながら個人差に応じた学習指導を行うことができた。しかし、実態に応じた課題内容をより深く研究し作成する必要がある。

3 生徒一人一人の学習状況の的確な把握とそれに応じた教師のきめ細かなはたらきかけを行う上で座席式指導案はその手だてとしてかなり有効なものであった。今後は、より能率的に活用できるものへ工夫改善していきたいと思う。

 

資料2 座席式指導案の形式と基本的指導過程

資料3 事前・事後テスト結果

資料3 事前・事後テスト結果

 

 

 

 


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