教育福島0209号(1998年(H10)02月)-033page
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インディアンの教え
楢葉町立楢葉南小学校長
渋佐常範
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−子供たちはこうして生き方を学びます−
○批判ばかり受けて育った子は非難ばかりします
○敵意にみちた中で育った子はだれとでも戦います
○心が寛大な人の中で育った子はがまん強くなります
○はげましを受けて育った子は自信を持ちます
○ほめられる中で育った子はいつも感謝することを知ります
○仲間の愛の中で育った子は世界に愛をみつけます
(作:ドロシー・ロー・ノルト/訳:吉永宏)
これは、本書の冒頭に掲載されている十一のアメリカインディアンの教えの散文詩の抜粋です。
子供の生き方を支援する呼びかけが、魅力的に語られています。
ニッポン放送「玉置宏の笑顔でこんにちは」の番組の中で、この詩を朗読したことから全国へ広がった感動を一人でも多くの人にと、早稲田大学教授で社会心理学者の加藤諦三先生が『アメリカインディアンの教え』をモチーフに本書を書き下ろしたものです。
さまざまな人間関係の中で、親子関係が特に大切と訴えています。
親に十分に愛されて育った人はやたら他人の注目を集めたがったりしないし、愛を神聖視して他人に「絶対の愛」を求めたりもしません。相手ができることしか相手に求めないので皆から愛されます。
逆に親から愛されなかった人は愛に飢えているため、やたらと人に愛を要求します。そのため誰からも愛されなくなり、すぐにひがんだり、虚勢を張ったりと、ついつい他人に嫌われてしまいます。
どんな環境に育った子供にも、「生きる力」を育むことが、これからの学校教育に求められます。本書は、子育て論にとどまらず、人間教育にとって何が大切なのかを教えてくれます。
本の名称:アメリカインディアンの教え
著者名:加藤諦三
発行所:ニッポン放送プロジェクト
発行年:平成二年七月六日
本コード:ISBN 四-五九四-〇一一三七-三
「本」をつくる人の本
県立安達高等学校教諭
加勢かおり
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心に残る本なら何十冊もあるような気がするが、一冊となると出てこない。熟読という点なら、アンやローラやメアリーポピンズを越えるものはいまだになくて、彼女たちのことを思うと、このごろの私の「読書」なんて。瞬間、何かを感じたようでいて何日かたてば忘れてしまう、そんな通り過ぎるだけのもの。反省。
本を切り刻んだ話をしよう。
ゼミの発表の資料作り。当時コピーは一枚二十円。文庫本なら古本屋で五十円だ。誰が始めたのだったか、私ももちろん本の切り張りを選んだ。テキストは漱石の『三四郎』。夏の夜更けの研究室、バラバラに散らばった明治の青春。
何年かぶりの友人とその話をした。彼女はそんなこともあったねと言った後、今なら絶対やらないな、とさらっと言う。そうだね、私ももうやらない。
あの鋏の感触を私は忘れない。皆、本当は気づいていた。私達が切ったものは、ただ、紙ではなかったと。本は人の思いのかたち。それを手に取り、読むという行為のなんと重いこと。
『三四郎』は、あの時刻んだ断片で私の心に浮かびあがる。ばらばらの言葉、きれぎれの小説。だけど三四郎や美禰子の姿は私から離れない。
ひとつの思いに与えられたことば。それはまた、いつかの瞬間、確かに私の中にも生じた感覚。私はそれを逃げるままにしたのに。過ぎ去る思いを留めることに成功した人がいる。それが作家。
しかし、その思いが「本」となるには、鷲田清一の言葉を借りれば「魔術師」が必要である。それは「文字の列を立体的なものとして構築する装幀者」だ。
本棚の一つ持っていれば、必ず「魔術師」菊地信義の本があるはず。私が私の思いに再び出会う時、その空間をつかまえた彼のこともまた思わねばならない。
本の名称:装幀=菊地信義の本
著者名: 菊地信義
発行所:講談社
発行年:一九九七年八月三十一日
本コード:ISBN 四-〇六-二〇八六六一-一
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