教育年報1956年(S31)-007/73page

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第三節
教育行政における安定と進歩の条件を
どこにみいだすことができるか
−昭和三十二年度への展望−
一、教育行政における府県の役割り
−県と市町村を通ずる
教育行政の一体的運営−
町村合併の進歩に伴い、市町村の行政
能力は一応強化された。ここで改って教
育行政において国と都道府県と市町村相
互の分担すべき事務について再検討の段
階にきていることが認められる。新教委
法の立法趣旨もこのような観点から読み
とられてしかるべきである。
今までの運営において教育行政の殆ど
すべてを府県が行うのだというようなこ
とがなかったろうか。
ここで市町村の段階において行わるべ
きことは何であるか、また現に市町村に
おいて行われている行政運営の現況か
ら、どういう問題点がみいだされるか−
これらの動向把握のうえにたって府県の
段階の仕事が進められる必要がある。し
たがって、教育行政の基礎単位としての
市町村教育委員会の行政能力をたかめる
ための施策が要請せられる。すなわち、
県と市町村とを通ずる教育行政の一体的
な運営である。
二、民意に直接する教育委員会議
への努力
−全県民的規模にたつ
教育行政へ−
新法の成立に伴い、従来の公選制度が
任命制度にきりかえられたため、ややも
すると民意の反映という点においていろ
いろの問題が残っている。
公選制は、廃止されたが、教育委員会
は合議制としての性格は貫かれている。
なぜ合議制の性格は存続されたのか十分
に考えられねばなるまい。
したがって、教育委員会の事務のう
ち、合議的な処理を必要とするものは十
分会議において論ぜられべるきであり、
その他については教育長の能率的な処理
にゆだねらるべきである。
こうなってくるといきおい、教育委員
会議の会議運営はずっと形式ばったもの
でなく自由討議形式のものにかわるべき
なのではなかろうか。事務局はいろんな
角度から資料をそろえて問題点を整理
し、それを会議にかける。会議では必要
あれば、公聴会等の手続をとって論議
し、事務局に公正妥当な判断を与える。
そして執行は事務局において行う。こう
いう手続きを進めて民意に直接する教育
行政をますます発展させていく必要があ
るo
全県民的規模にたつ教育行政の発展と
は、こういうことを意味するのではなか
ろうか。
三、学校教育及び社会教育相互の
連関性の確保
教育行政の領域において、学校教育及
び社会教育は車の両輪のごとしといわれ
ている。しかし、ややもすると行政的に
はそれぞれ列箇に運営されるきらいがな
いとはいわれない。そして相互に牽制し
合うことがなかったであろうか。定時制
高校への負担金が青年学級費の犠牲にお
いて行われたりしていることもないわけ
ではない。
そしてまた今問題になっている児童生
徒の学力の問題にしても、学習環境とし
ての家庭の問題は、大きな意味をもって
くる。また市町村における社会教育活動
において教師のはたす役割りは大きい。
これらのことを考え合わせると、この二
つの領域を通ずる協力の問題を具体的に
考えることがいかに大事なことであるか
は明白である。
四、行政的志向の重点をまず基
礎的な条件整備に
今までの行政的志向は、どうしても総
花的にならざるを得なかった。すなわち
、事業中心方式であった。そして基礎的
な条件整備は自然のなりゆきにまかせら
れる傾向があった。しかし、財政再建計
画をまつまでもなく、学校の適正配置を
目的とする統合問題は緊急の課題であ
る。社会教育における公民館の整備計画
も当面する問題である。これらの基礎的
な条件整備をどうしてなしとげるか、昭
和三十二年度は、まさに問題の年であ
る。これらの基底が整備されてこそ、事
業の効果もあがるのである。
こうしてみると、教育行政は、新しい
再出発を迎えたといっても決して誤りで
はあるまい。われわれは、新しい再出発
を勇気をもってふみだしたいものであ
る。 

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