教育年報1956年(S31)-031/73page
2 事業の成果
(1) 設備の充実状況
三〇、七、一六付初中局長通達によ
りすべての公立小・中・高・盲・ろう
学校は理科教育設備台帳を作成し、そ
の総括表を県教委に提出しなければな
らぬことになり、これを実施したが、
その結果は三十一年の項にのべる。
(2) 理科教育に関する研究成果
理振法の条文に示すとおり、理振法
は単に理科設備(備品)を購入充実す
るにとどまるものではなく、理科教育
そのものの振興を目標として制定され
たものである。かかる見地から本県に
おいては補助対象校は理科教育に関す
る研究を行いこれを発表報告する義務
をもつことになっているが、二九年度
対象校の研究成果は三十年度において
各地で発表され、それぞれの地域にお
ける理科教育振興のため有効な資料と
なっている。これを研究分野別に分類
すれば次のとおりである。
イ 理科教育設備はいかにあるべきか。
いかにして充実すべきか。
ロ 理科教育をいかに行うべきか。学校
経営面、カリキュラム、学習指導法等
の研究。
イについては理振法基準の機械器具の
みならず基準外の品目についても検討を
行い、その学校に適した基準の作成につ
とめている。更に備品のみならず施設の
面の研究、学校全体としての環境構成の
一元化や、施設設備の管理運営の合理
化、能率化の研究も進めており一応の結
論に達している。充実方法については年
次計画の立案、そのための重要度使用頻
度等の研究もなされている。さらに経済
的に充実するために教具の自作の研究も
広く行われ、これがまた教育効果の向上
に役立つことも実証されている。次に学
校経営面においては特に小学校における
教師の能力差に基く学級差解消の問題は
今後にまつところ多く、また現行指導要
領の不備に、由来するカリキュラムの欠
陥是正や、教師の教材研究・学習指導技
術の研究は共に今後の研究実践によらね
ばならない。しかし多くの問題点を発見
自覚してこれを解決しようとする意欲を
高め、校内現職教育、方部の実技講習会
等により向上の一途をたどっていること
は喜ばしい。
二、昭和三十一年度事業状況
対象校選考の条件、義務の設定は前年
度に準ずる。但し本年度は特に左の諸点
を考慮した。
(1)市町村については補助金等適正化法
の実施に鑑み補助事業を完遂しうるも
のを選ぶ。
(2)県立高校は未対象校及び現有率の低
い学校を優先する。
(3)小・中学校中心対象校は初中局長通
達に基き、一ケ年限りの指定とする。
3 補助金配分状況
(第二表)
昭和三十一年度 理科教育設備費補助金配分状況
学校種別 補助希望校数 補助対象内定校 補助内示額 設置者負担額 補助対象校選定方法 千円 小学校 101 57 3450 市町村費同額以上 希望募集、出張所と推薦 中学校 88 43 4211 本庁決定 高等学校 ― 23 2363 県費同額 本庁決定 盲ろう学校 ― 3 100 計 ― 126 10124 ― ― 4 補助金の交付
前年度どおり交付決定額の九割を前金
払とし、残額一割は実積報告書の審査後
補助金の確定をまって第四・四半期にお
いて精算払をすることになった。
5 二九、二〇両年度末本県理科設備状
況について
県下小・中・高・盲・ろう学校の設備
一覧表を第三表及び第四表に(次頁参
照)
イ 分校の現有率が極めて低い。特に小
学校の分校に対する設置者の関心が極
めて薄いことは僻地教育の振興上大問
題である。理振法制定以来分校からの
補助申請が小・中学校とも皆無である
ことは誠に遺憾である。二分の一国庫
補助法の性格上、設置者負担のない学
校には補助ができないからである。
ロ 盲ろう学校は県立学校としては低率
である。ことに行動をとおして指導し
なければならないろう学校において
は、設備を一層増強することが必要で
ある。
ハ 高等学校の現有率の増加が少ない。
市町村立の小・中学校においては第三
表、第四表に示すとおり、補助金によ
らず設置者が独自で支出する金額が不
十分ながらあるほか、基準総額が低い
ので増加率が大きいが、高校において
は理振法以外では理科の備品費としい
の支出がないので、ほとんど団体費に
よって充実されている現状である。し
たがって設備の老朽化とともに将来、
高校の設備が実質的には最も低率を示
すに至るのではないかと思われる。こ
の点から高校に関しては理振法による
外独自の計画により設備の更新と充実
に務めなければならない。
ニ 現状のままで設備を充実してゆけば
今後何年で百%に到達しうるかといえ
ば小・中学校一七年、高校ニ五年、盲
ろう学校については二五年であるが、
この計算には破損老朽による廃棄を考