教育年報1956年(S31)-034/73page

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な時宜にかなった立法に対して前途に暗
影を投じたことはまことに残念でならな
い。
 しかしながら県下産業教育諸学校の現
状はまだまだ不充分であり、ここ当分の
間継続実施されることを願ってやまな
い。
 最後に中学校研究指定校についてであ
るが、前にも述べたように昨年度より半
減され、研究指定校でありながら国庫補
助の対象にならなかった学校が半数もあ
ったことは、まことに遺憾に堪えないと
ころであり、次回よりはかかることのな
いよう研究学校の指定方法を検討した
い。さらに中学校の設備の現状に鑑み、
中学校産業教育研究指定の増加を願って
やまない。
第四章 社会教育
第一節 社会教育はなぜこんなに圧縮させられ
    るのか
 社会教育は貧困な状態におかれてお
り、ある危機に立たされている。
 市町村における年次別社会教育費の推
移調査によって昭和二十九年度より昭和
三十一年度までの市町村社会教育費決算
見込額の投資的経費は、昭和三十年度は
前年度に比し市は若干増加しているが、
これが町村においては三分の一以下に減
少している。全体に見て、昭和三十年度
の約二分の一に減少していることがわか
る。
 さらに昭和三十一年度と前年度とを比
して見るならば市においては約三分の一
に減少し町村においても約二分の一に減
少し昭和三十一年度と前年度とを全般的
に比して〇・七%の差ではあるが、金額
においては六、五三七、〇〇〇円となっ
ている。
 昭和二十九年度と昭和三十一年とを全
般的に比し約四分の一に削減されてい
る。 

別表1)市町村社会教育決算見込額
(投資的経費)(単位千円)

年度 /市町村 昭和 29年度 昭和 30年度 昭和 31年度
    7,039 2,762
6,246 (793) (△4,277)
    112.6% 39.2%
    6,725 4,465
19,592 (△12,867) (△2,260)
  34.3% 66.3%
    13,764 7,227
25,838 (△12,074) (△6,537)
    53.2% 52.5%

 このような現況においては社会教育の
拠点といわれる公民館活動も益々衰微す
るばかりで、はなはだ遺憾にたえないと
(別表1〉
 市町村社会教育費決算見込額
    (投資的経費)  (単位千円)
思う。施設設備の整備を市町村当局は十
分考え、社会教育の振興をはかり限りな
い前進をつづけ明るい地域社会の建設に
一層の御尽力をお願いしたいと思う。
 市町村合併によって社会教育における
行財政は一つの危機に瀕しており特にそ
れが社会教育費に現われている。社会教
育費というものはその大半すなわち七〇
%〜八〇%を市町村が負担していること
を考えると、このことは実に重大な問題
である。
 一般的に社会教育に対する無理解の原
因は、社会教育はその地域の住民に対し
て教育的要求を無視していることも考え
られる。すなわち実生活に即する教育で
はないといえるのでないだろうか。乏し
きを分つというのがわが国の社会教育の
任務であろうのに社会教育はちにつかな
いとか社会教育は根をおろさないとの批
判は一応傾聴に価するものがあるであろ
う。
 われわれはここで反省せざるをえな
い。
 それならば社会教育をいかに推しすす
めたらよいか。昭和三十年度の反省によ
って昭和三十一年度の努力目標を「青少
年教育体制の確立」「婦人教育をより計
画的なもの」「公民館をより望ましいも
の」「みんなで指導者網をつくる」とい
うところにおいた。
 社会教育は義務教育ではない。即ち出
席しない自由をもっている地域住民に対
して拘束力はもたない。
 ここに指導者網を広めて一層社会教育
関係団体との連けいをはかったのは社会
教育の振興を意図する現実の姿である。
 社会教育費は地方財政貧困のしわよせ
のため削減であろうが、市町村の予算総
額においては勿論、消費的な経費だけの
増減をみても前年度に比して減じてはい
ない。
 それなら何故に社会教育費だけが削減
されねばならないのか。地方財政の貧困
の因は何か。今こそ社会教育はそのおか
れている自己の位置や方向と構えをはっ
きり見きわめる必要があろう。これはま
た同時に混迷せる現今の政治への関心で
もある。
 ―振興のために―
 かくの如き状況において、県の行った
三十一年の重要な事業は大体別表のとお
りである。 (別表2参照)


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