教育年報1956年(S31)-044/73page
成人指導といえば、考えなければわか
らない。婦人を除いた成人指導は「おや
じ教育」だろう。などと駄じゃれを飛ば
しているわけにもいかない。男も女も含
めて成人指導の場は何といってもPTA
だ。そのPTAは一般世人にどう理解さ
れているだろうか。今くわしくこのこと
を問題にしているわけにはいかない。い
ま問題にするのは、婦人会といえば磐石
だったものが「農協婦人部」ができた
り、また職場をもっている女の人たちの
グループによって揺すぶられ、反省の時
期に入っているということである。
ことに町村合併後、大世帯になる傾向
に耐えて、婦人会の小グループ活動を育
てようとする婦人自身の行為は、前述の
青年たちの活動ととも刮目しなければな
らない。来年度の努力目標は、したがっ
てこれらの活動をどう盛り上げていく
か、といろところに指向されることは当
然である。地方の公民館や教育委員会事
務局のお努力も、したがって容易ではな
かろろと思われる。だが、力をあわせ
て、こういう活動の芽生えを盛り上げて
いきたいものである。
補 記
努力目標をかかげ、それへの接近をは
かってきたものの、依然として残された
問題がある。
(1) 勤労青年教育
(2) 関係各機関との提けい
(3) PTA
(4) 社会教育施設の充実
(5) 指導者
などであり、これらをとりあげて一節を
設けてみたものの、紙面の都合で削除せ
ざるを得なくなった。あるいは、ため
に、一貫せぬ報告となったかも知れぬこ
とをおそれ加え記しておく。
第五章 保 健 体 育
児童生徒の健康を確保し、体位体力の
向上を図り、教職員の健康を保持増進
し、さらに社会人に対して体育運動を通
して、健全なレクリェーションを与えて
いくことの重要性は、今さら云々する必
要はないが、保健体育課においては、こ
れらの人間として基本的に必要なものに
対して、それぞれ、その向上発展を図ろ
うとするものであるが、それだけに、行
うべき範囲も広く、問題点も多い。
まず、児童生徒の体位の現状について
検討してみると、文部省発行の身体検査
統計をみるまでもなく、全国的にみて、
身長・体重・胸囲いずれも低位にあり、
さらに環境的条件を同じくする東北各県
と比較してみても、余りよい結果になっ
ていない。特に本県の場合市部の児童生
徒と、郡部のそれとでは著しい差が認め
られる。これは本県農山村の児童生徒の
向上について一層努力しなければならぬ
ことを物語っている。
体力の現状については、今これを比較
する正確な資料はないが、各種競技会な
どのレベルをとおして判断するに、上昇
線を辿ってはいるが、楽観を許さないも
のがある。この点については、単にわが
県だけでなく、日本全体の問題として、
今次の第十六回メルボルンオリンピック
大会におけるわが国選手の活動状況は、
よい反省の資料となるであろう。すなわ
ち水泳は別として、体重の制限下に行わ
れる重量挙・レスリングあるいは、身体
支配力が主となる体操競技等において
は、優秀な成績を収めているが、地力を
発揮して戦う競技については、陸上競技
を始めとして、いずれも惨敗に終ってい
る。
わが国にとって、将来の発展を、双肩
にになっている青年層の代表者が、世界
のレベルから引き離されているようで
は、その下部組織の状況もうかがわれ、
ここにもまた保健体育をとおして今後大
いに努力せねばならぬ点が認められる。
"体位の向上・体力の強化・ハードト
レーニング"これはわが国としてもわが
県としても、世界の諸国に伍して今後の
発展を期する上に、理くつをぬきにして
強化しなければならぬ大きな教育の一方
向である。
さらに体位や体力の強化といっても、
これは一朝一夕にどうにもなる問題では
ない。科学的に合理的に計画的に施策を
講じなければ、その発展は期せられな
い。この点から、国民の栄養問題、した
がってわが県の栄養問題が大きく、浮び
上ってくるであろう。すなわち学校給食
の普及充実が大きな問題となってくる。
本県における学校給食の現状をみるに
その普及率はやはり向上しているが他県
に比して、あまりよいとは言えない。時
に本県の場合は、農村における普及率が
よくない。この点なども、本県学校教育
面において、基礎学力低下の問題と同様
将来の県民発展の上から十分考慮しなけ
ればならぬ問題であろう。
保健体育課としては、毎年これらの諸
問題ととりくんで、それぞれ施策を講じ
てきたが、過去一ケ年間を反省すると
き、学校体育面については、わが国の現
状に即応して、改訂されつつある保健体
育の学習指導要領の線に沿って、着々手
を打ち、教師の指導の心構えやへ態度等
においても、あるいは指導法などにおい
ても次第にしっかりしてきて、軌道に乗
り特に研究指定校などにおいては、相当
高いレベルに達している現状である。な
お集団行動等においても、昨年県教委と
して現場に基準を示した結果として、大
分、向上しつつあることは、本当に嬉し