教育年報1957年(S32)-036/71page

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関です〉などと公言する公民館長すら出

てきて、せっかくの個人個人の自由な芽

生えを無視する傾向すらある。

 府県でいえば、県民自身が集団をつく

っていろいろな事業を実行しているの

に、そういう事業とはまったく孤立して

〈俺にしたがえ〉といった事業をブッ

て、それで社会教育が行われていると考

えてはならない。事業をブッこともよか

ろうが、かえって施設や設備に力を注い

で恒久的な環境の醸成につとめていかな

ければならないと思われるのに、予算の

上から見てもそういうものはだんだん減

ってきた。

 国でいえば、公民館建築助成に一県一

館、わずかに二十万円とか十五万円の少

額で、もう数館分を助成してくれてもよ

かりそうなものなのに、特別助成金とや

らで〈ひもつき〉の事業費が送られてく

る。三十二年度の特長は、この特別助成

金ではなかったかと、ひそかに反省して

いる。特別助成金、決してわるいのでは

ない。新しい刺激を受けるという点で大

いに歓迎するが、そのために国や地方公

共団体(府県や市町村)の社会教育にお

ける使命があいまいにされてはならない

と思う。

 国も府県も市町村も、宿泊訓練の可能

な公民館をつくっていくとか、青少年の

ための教育キャンプ地とか、サイクリン

グやハイキングによい場所を設定すると

か、簡易に撮映したり映写したりできる

撮映機や映写機を購入し、共同でフィル

ムライブラリーを経営するとか、そうい

った方向にもう少し力を入れてよいので

はないか。

 もう一つ大切なことは、社会教育の後

継者をつくるということ、および社会教

育の専任担当者を交換しあえるような仕

組と場所とをつくるということ。このこ

となくしては社会教育は幅の広い、深さ

の深いものにならず、むしろ停滞と、妙

な権威(オールマイティ)が生れてくる

だけである。どんどん新人をつくるこ

と、どんどん交換できる場所をつくって

いくこと。いくら新人をつくっても、交

換できる場所がなければ、どうにもなら

ない。また、いくら交換できる場所がつ

くられても、それにたえうる新人がつく

られていなければ、これもまたどうにも

ならない。他県のことは分らないが、理

論的にも現実的にも社会教育の進展は、

このことなくしては不可能である。みん

ながぼんやりしていると、また戦前踏ん

だ同じ〈わだち〉を、再び誰が踏まぬと

いい切れるか。

第二節活動し始めた公民館

 公民館は社会教育の機関であるという

こと、そして教育というからには、公民

館は人間の結びつきを考えねばならぬと

いうこと、この人間の結合を生み出すこ

とが公民館の仕事であるということが一

般的に理解されてきたことは今後の社会

教育に曙光を見出したようである。

 公民舘活動は社会教育法にもとづいて

行われてきたわけであるが、法そのもの

は関係者から誤読・誤解され、社会教育

における公民館の役割に関して種々問題

が発生しているようである。

 公民館活動が不活発な原因として、ま

づ地教委の任務と公民館の任務について

原則的な相違があることを理解しないか

らであろう。

 法に示されているところの公民館は、

市町村がこれを設置し、地教委がこれを

管理するところの社会教育施設であると

いうことは、現在においては、このこと

がはっきりしてきたようであるが、ここ

でもう一度、トラブルが発生しないよう

に、両者の任務を一応明瞭にしておく必

要があると思う。

 最近、両者の間にトラブルが少なくな

ったことは、社会教育の振興上よい傾向

であるが、といって今後の公民館活動に

なんらの不安がないとは考えられぬの

で、事業面をめぐる両者のトラブル発生

の可能性は残されているとみるべきであ

ろう。

 このことがまた、新しい町づくりや村

づくりに大なる影響をおよぼしてくるも

のである。

 例えば、青年学級については、法的に

ダブッているから、地教委が直接実施せ

ねばならぬと考えてみても、青年学級振

興法によれば、開設は市町村、管理は弛

教委、実施は公民館または学校というよ

うにはっきりしている。

 すなわち、地教委の側は事務で、公民

館の方は事業である。

 このことを考えれば、この両者の縄張

り争いも消減ずるものと思われる。

 公民館活動は、再出発する時期

 従来の行事中心型の社会教育行政から

脱却して、もっと地道に、民衆が自分で

考え、自分たちで研究し、学習する気運

を盛りあげる方途を見出すように努力す

べきである。

 公民館は住民全体を対象とした教育活

動でなくてはならない。

 町村合併にともなう公民館の問題は大

きな問題として論じられてきたが、全市

町村的立場において、全社会教育的立場

における、総合的社会教育計画を具体化

する施設として、いまこそ再出発すべき

時期にきていると思うものである。

 動き出した公民館運営審議会委員

 公民館は住民全体を対象とした活動で

なければならない。

 施設は不備でも、専任主事はいなくて

も、当分はやむをえない。

 しかし運営審議会委員は本当に活動を

はじめ、総合計画、年間計画を作成し

て、公民館活動を計画的・合理的・効果

的に展開しつつあることは喜びにたえな


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