教育年報1957年(S32)-043/71page

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第六節視聴覚教育をどのように進めたか

         -ラジオ・テレビ・有線放送・映画-

 教育者の仕事というものは、プロデュ

ーサーの任務とよく似ているところがあ

る。児童生徒や学級生たちが“学習の目

的を達成するためには一体何が必要なの

か”を絶えず考え、その必要な諸条件を

常に備えておいて、各スタッフが思う存

分に活躍し易い環境を作ってやる。と同

時に、その活動の状況を静かに見守って

やる。これが新しい教育の新しい在り方

ではないか。自主的な学習のでき得る態

度の育成とは“お題目や理論の羅列”で

はない。でき得るような雰囲気の中に、

彼や彼女達をおくことである。

 殊に、視聴覚的なマス・コミを学習

に利用しようとする場合には、どうして

も、その媒体物である映写機、ラジオ、

テレビ等が必要であり、数多くの教材映

画がなければ、どうにも仕方がないので

ある。

○放送教育

 ラジオや録音機のない学校、公民館は

ほとんどなくなった。問題は、教育放送

や教養番組を学習にいかに利用するかで

ある。特に社会教育の場合、放送時間と

働いている青少年や一般成人が集会を持

つ時間とのくい違いをどうするか、録音

テープの活用をどうするか等は今後残さ

れた第二の問題である。

〇教育テレビ

 平中継所(水石山)が三月一日より中

継放送を開始しており、福島中継所

(笹森山)も今年中には完成の見込みであ

る。NHKを含めて一〇八局の放送開始

も間近く、教育放送、教養放送の時間も

増加されることになっている。

 本県においても、相馬地区の公民館で

は集団聴取を実施中であり、学校におい

ても、本宮小、平石小(信夫)等ではす

でに“学習の効果をあげるためにテレビ

をどのように利用したらよいか”の公開

研究会まで催している。

 教育用テレビ(六万円)の普及中であ

るので学校、公民館等では少くとも一台

宛のテレビを持つようになることは時間

の問題である。

(石城の江名小では五台所有、

 小名浜小学校では三台、若松市は各学校一台宛

のテレビを持っている)

○有線放送

 「どこにいても、役場や農協、学校か

らの通知をきいたり、お互いの連絡がで

きたら-」という町や村の要望を満た

すために有線放送がある。目下全国的に

非常な勢で普及されつつある。

 本県においては、塩川町駒形(耶麻)

鹿島町(相馬)鏡石(岩瀬)柳津

(河沼)夏井(平)小島、福田(川俣)

安積町、岩代町(安達)大越(田村)等に各

々設置され「強風注意報や出荷野菜の価

格等がいながらにして聞けたり、電話も

かけられる」というので住民達から非常

な好評である。

○映 画

 放送教育やテレビ教育の場合は、ラジ

オ、テレビを設置すれば、教材は放送局

から流れてくる。しかし映画の場合は、

少くとも映写機と映画、操作と指導の技

術が必要条件となってくる。

1) 映写機

  二月現在県内の十六ミリ映写機台数

 は学校、公民館等で約四〇〇台(う

 ち、一〇七台は石城ライブラリー管

 内)何れも地域フィルムライブラリー

 が設置されたため、急激に増加したも

 のである。

2) フイルム・ライブラリー

  今年に入ってから、郡市単位による

 地域フィルム・ライブラリーが、田村

 (九月)郡山市(十月)安積(一月)

 坂下町(八月)東白(九月)石川(六

 月)南会東部(十月)の七郡市に設立

 された。これで本県には、県のを含め

 てフィルムライブラリーが十九できた

 ことになり、それぞれ独立した予算を

 持って自主的な運営をしている。

  フイルムの本数は約一六〇〇本、す

 べて学校教育、社会教育用の教材映画

 のみである。

  その総予算は三〇〇〇万円を超え、

 うち、フィルム購入費は一三〇〇万円

 に達している(映写機等の購入は、各

 学校、公民館の問題として、ライブラ

 リーより切り離し、ライブラリーは、

 どこまでもフィルムの確保と利用に専

 念すべきであろう)

  なお、ライブラリーには、その組織

 の大小に関係なく、フィルムと同様に

 一名以上の専任者がいなければならな

 い。現在石城、西白、岩瀬、相馬地区

 田村の各ライブラリーに専任者が一名

 宛常勤している。県南地区では専任者

 会議を何回か持ってライブラリー運営

 に関する連絡、リスト交換、事務打合

 せ等を行っている。

3) 技術者の養成

  四月以来、坂下、石川、平、棚倉、

小野町、郡山、三春、南会伊南、相馬

喜多方、田島、塙の各方部で技術講習

会が自主的に開催された。現在のとこ

映写機操作技術免許証所有者は約四〇

〇〇名、主として小、中校教員、公民

館主事、青年会員等である。

  今年に入って目立つことは“理科

 教育振興のためには、どうしても視聴

覚教材を利用しなければだめだ”とい

う高校教師が数多くなったこと。学級

生自身による映写機の操作、映画の選

定を行って、学校教師や公民館主事に、

依存した学習より脱却しようとしてい

 る婦人学級が出てきたこと。

福島大学学芸部において、夏期及ぴ冬期休業を

利用して技術講習会がもたれて、卒業

生の中男女併せて約二〇〇名が技術免

 許証所持者になったこと等である。


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