教育年報1962年(S37)-056/169page

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(5) 参 加 者

 1) 公私立高校教員で前2回の研究協議会に参加しな

   かった者 871名

(6) 旅 費  研修旅費支給

 第4節 学力向上対策

1 学力向上対策の発端と助言の方向

 本年度学力向上対策は,まず4月26日,出張所長,主

任,指導係,合同会議をひらき,37年度事務局運営,指

導体制の確立,努力目標,各課室の努力事項などについ

で協議を行なった。席上,教育長が,学力向上および高

等学校生徒急増対策を二大支柱とする所信を表明したこ

とに発する。

 教育長の所信は,これより後の施策の源泉となるもの

で,要点を教育時報32号から再録しておくこととする。

  ―要は,教職員1人1人に奮起していただき,学

 校長の学校経営の手腕に期待せざるを得ないのではな

 いかと考える。

  また個人的な意見ではあるが,教育界は常に安定し

 落ちついていることが必要であると考える。(中略)

 教職員が安定した気持ちで職務に専念できるように努

 力したい。また町村政の混乱には教育をまきこまない

 よう事前に解決をはかっていきたい。

  県教委としても,学力低下の原因を早急に探究して

 向上への施策を樹立するため現在検討中であるが,指

 導体制の確立をはかり,指導法の改善,教育予算の増

 額,施設,設備の充実等に大きな努力をはらわねばな

 らないと考えている。

  各市町村教委においても,教育予算の増額に努力し

 施設設備の充実,教材教具の完備等につとめていただ

 きたい。また学力調査の結果のじゅうぶんな検討と活

 用をお願いしたい。

  各学校においては,自校の学力の位置をよく検討し

 指導法の改善等を詳細に探究し,学力の低下を招いて

 いる原因を,各校がそれぞれに,その除去につとめて

 いただくことを希望する。

  しかしたがら,この学力調査によって学校間に無用

 の競争心をあおったり,教師に過重な負担をかけるこ

 とのないようにくれぐれも指導していただきたい。―

 翌27日,指導係会においては,次のような話し合いが

行なわれ,さしあたり指導係の努力の方向づけがなされ

た。

 「学力に関する危機に際会して,おたがい指導の役目

を負うことは,おたがいの一生にとって深い意義をもつ

ものと考える。

 われわれの総力を結集して,教育内容の刷新向止につ

とめ,それぞれの機関およびそのメンバーとの連絡てい

けいを密にして,県民の期待にそうよう実効をおさめて

いきたいと念願する。

 危機を脱するみちは,忍耐と勇気と知恵とゆとりをも

って実態を洞察し,適確な対策を樹立し,きめこまかく

ねらいを失なわず,着実に実践をつむことであって特別

に王道があろうはずはないと考える。」

 このような基本的な態度において,さしあたり学校訪

問等で助言の方向を次の十カ条におく。

( 1)学校全体におちつきがなければならない。

( 2)学力向上へのモラールを啓培する。

( 3)学力診断テスト等によって現有学力を正しくとらえ

 る。

( 4)上の結果にもとづき,治療伸張等の方策をたてる。

( 5)授業時数の確保につとめる。

( 6)授業の充実をはかる。

  たしかな学習,ゆたかな学習,能率的な学習の条件

 をこまかに分析して,それに応じて実効をおさめるよ

 うにする。

( 7)評価を適切に行ない,授業の充実をいっそう適確に

 する。

( 8)必要な教具をできるだけ早くととのえる。

( 9)学力向上のための努力が, 人間形成にひずみをもた

 らさないように,つねに配慮する。

(10)学力向上の努力のために,現場の教師が過労におち

 いらぬよう,その仕事を合理化し,余ゆうのある活動

 をするようにする。

2 当面の対策樹立の過程と内容

 さて,4月以降県下小,中学校については,各出張所

管内各1校16校の研究学校を,高等学校については5つ

のブロックに計7校の研究学校を指定して,それぞれの

角度から学力向上の問題に迫る研究をおねがいした。

(「学校教育」8号参照)

 一方,学力向上施策についての考え方をのべて大方の

参考に資してきた。このことについては,「学校教育」8

号における―それぞれの立場で―および「学校教育」9

号における―ひずみなく,ゆたかに―および月報6月号

学力向上をめぐる諸問題等をとくに参照されたい。それ

らは,後に発表された「学力向上についての当面の対策

」の前文ならびに,この対策全文にそえられた教育長談

話へ連絡展開するものであるから,あわせて検討されれ

ば,施策策定の根本精神がおのずからあきらかにされる

であろう。


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