教育年報1962年(S37)-060/169page
(3) 施設,設備の充実をはかる。
授業を充実し,学力を向上させる物的なささえは,施
設,設備である。この物的なささえがなく単に教育精神
のみを強調しても,実効をおさめえないことは明らかで
ある。
したがって,
1) 市町村当局および市町村教育委員会との緊密な連
絡により,施設,設備の計画的な充実をはかる。
2) 設備基準にもとづき,教育課程実施上欠くことの
できないものを重点とし,緩急の度をはかって合理
的な充足を推進する。
(4) 教職員の組織ならびに配置を改善する。
教職員の定数に余裕があり,かつその保持する指導力
をじゅうぶんに発揮できるように配置し組織することは
教職員に働きがいを感じさせるものであり,このことは
授業を充実し,学力を向上させるための基本要件である
したがって,
1) 教職員定数と人材の確保をはかるとともに採用方
法の改善をはかる。
2) 各学校の教職員組織上の必要をみたすとともに教
師の専門を生かした配置につとめる。
3) とくに小規模学校の定数増をくふうするとともに
学校規模の適正化につとめる。
4) とりあえず3こ学年以上の複式学級の解消につと
める。
5) 市町村当局および市町村教育委員会の協力のもと
に,特殊学級を増課し,普通学級の学力の向上をは
かるとともに,学習上発達のおくれている児童生徒
の学力の向上をはかるようにつとめる。
(5) 指導行政の充実強化をはかる。教育現場の必要に即
し,指導助言の本質にかなうよう,組織ならびに運営を
検討改善する必要がある。
したがって,
1) 指導組織について検討し,その改善をはかる。
2) 指導委員制を管内の実情に即し,その適正な運用
をはかる。
3) 本庁にブロック担当の指導主事をおき,本庁と出
張所指導主事の連絡を緊密にし,それぞれの機能を
じゅうぶん発揮させるようにする。
4) 指導力を強化するため,指導担当課,教育調査研
究所,大学,市町村教育委員会等の連絡を緊密にす
る。
5) 指導主事の本貫をよく発揮するようその研修を強
化すると,ともに,指導助言の機会を多くし,現地の
必要をみたすことに努力する。
6) 研究学校制度を検討し、その研究運営のあり方を
改善し,現場の教職員に役だつようにする。
7) 文書による指導を強化するため,「授業充実の手び
き」「教育課程研究集会集録」「研究学校集録」等
を編集し頒布するとともに,その活用をはかる。
8) 教育研究機関を強化し,指導助言のための資料の
提供ならびに研修の機会を拡充する。
(6) 家庭と社会の理解と協力を高める。
学力に影響する条係として,家庭と社会は根底的な役
割りをになっている。
したがって,
1) 本県児童生徒の学力ならびに,これに影響を与え
る条件の現状に対する一般県民の認識を深めるため
「月報」「時報」「学校教育」「社会教育」「体育
時報」等の編集内容の充実と配布範囲め拡大をはか
るとともに,マス,コミおよびPTAの組織等を活
用し,広報活動の強化をはかる。
2) 各関係機関および社会教育自体との連絡を緊密に
して,学校における施設,設備の充実,家庭,社会
における文化的,教育的環境の整備に対する県民の
意識の高揚をはかる。
3) 入学前の教育を重視し,正常な幼児教育の発達を
はかる。
4) 家庭学習の方法や,家庭と学校における学習相互
の関連のつけかたについて研究し,正常な家庭学習
をすすめるとともに,児童生徒各個の学習効率の向
上をはかる。
(7) 教育先進県の実態を調査して,その結果の普及と活
用をはかる。
上記各項目に関連する視察調査を行ない, 本県の
実情に即する施策をいっそう確実にするように役だ
てる。
(8) 学力向上の対策会議をひらき,長期にわたって対策
の審議を行なう。
学力に関する要因を分析し,資料を整え,対策を
たてることは,当面する仕事にとどまらず,長期に
わたり,抜本的に迫る必要があるので,この会議を
設け,実効をおさめるようにする。
以上各項の実施にあたっては,とりあえず,
とくに
1) 教職員の研修に関する施策
2) 教職員の配置に関する施策
3) 教職員の事務量軽減に関する施策
4) 施設・設備の充実に関する施策
5) 指導体制の強化に関する施策等
を可能のものから重点的に実施するものとする。