教育年報1962年(S37)-152/169page

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ープが自主的に借りに来るというきわめて甘い考えに立

っていたように思われる。むしろ,分館に送り込む前

に,幾つかの箱に詰めて,希望する分館周辺の市町村に

対して,郵送またばブックモビールで送り,その市町村

で何カ月か利用した後に,その市町村から分館に届けて

もらってもよいのではないか。そして,届け終ったら,

また新しい箱詰の図書を借りて来ることもできる筈である。

 一例を平分館にとって見ると,平分館に直送する前

に,4市2町2村(もちろん希望しない市町村には送ら

ない)にまず送り,それから何カ月か後に4市2町2村

から分館に送ってもらい,また必要ならば別な図書を分

館から借りて来るのである。

貸出文庫

 1) 4市2町2村が直接送ってほしいという希望がな

   ければならない。

 2) 県立図書館では,その希望に応ずるだけの図書の

   準備が必要である。

 ちなみに,茨城県では,一つの試みとして,このよう

な方法に協力する市町村は,自らも3万円分の新しい図

書を買い,県立図書館からも3万円分の新しい図書を流

してもらって,これを合わせて住民に対して貸出しを行

ない,一年の後には県立図書館分の図書を県立図書館

に返す方法をとっている。しかし,それだけでは不充分

であるから,近辺の市町村と組んで,お互いに貸し借り

を行ない,できるだけ新しい図書を沢山読む仕組みであ

る。詳細については省略する。問題は,現在の分館より

もさらに近いところに届けるということが,一番大事な

点ではなかろうか。

 この方法を本県が採用する場合には,1箱30冊の図書

2箱ずつ,という最少限度を出発点として考え,つまり

一般図書の現在の単価は約350円であるから,

   350円×60冊=21,000円

どの市町村でもそのために2万円程度は準備してもらわ

なければならない。この方法は市町村自体が読書運動を

促進してゆくという気運も高まるように思われる。

 4) 「貸出文庫」の利用者である読書グループの育成

   にっとめるよう,市町村に対して常時はたらきか

   けること。

 昭和37年4月1日現在で調査した結果であるが,豊録

された読書グループの数は全県下で438,そのメンバー

は8,193人であるという。しかもそのうちの183グループ

は県北に偏在しているから,残りの読書グループが六つ

の分館に所属していることになる。いずれにしても1万

人足らずの読書グループ会員では寂しすぎはしないか。

 読書グループを育成するということは,簡単に聴取で

きるテレビやラジオ,それから少しは労力を必要とする

新聞や週刊誌,いいかえれば,これらのマス・コミの中

で,お互いに「受け売り」でない自主的な判断力を養

う,という点で大きな役割をもつものであるから,いか

なる形態にもせよ,「読書」を生活の一部として取り入

れる小さな集団(読書グループ)を,それぞれの市町村

教育委員会が積極的に育成されることを望みたい。

 いうまでもなく,一般成人の読書は,未来のためとい

うよりも,どちらかというと現在のために必要であるか

ら,読書するものである。つまり,このことを大別する

と,自分の職業または生活のために直ちに役に立つ「実

用向き」の読書か,あるいはレジャーとして,すなわち

「娯楽として」読書するか。この二つの傾向を常にもっ

ている,と考えられる。そこで,「娯楽向き」の図書は

県立図書館から配本してもらい,「実用向き」の図書は

市町村教育委員会自体で準備する,といった分担も可能

になる。各市町村教育委員会で,読書グループの育成を

積極的に展開していただくことが,間接には県立図書館

の分館活動を活発にする原動力となることは,言うをま

たない。

 5) 分館には専任の県職員を配置するよう関係方面に

   働きかけること。

 本県における県幸図書館の分館は,分館というよりも

むしろ配本所と称すべきものである。この配本所ともい

うべき分館は,現に市または町が設置している図書館ま

たは公民館を借りて,単にその市または町の住民に県立

図書館の資料を提供するのみならず,その市または町の

周辺にある市,町,村の住民に対しても,県立図書館の

資料を提供しようとし,また可能な限り従来も提供して

きたのである。しかし,分館所在の市または町の設置す

る図書館または公民館は,自己の所属する市または町の

住民に対して奉仕する義務はあっても自己の所属する

市または町を超えて,その市または町の周辺にある市町

村の住民にまで奉仕できる余裕はもちあわせていない。

 真に分館活動を活発にして,現在唯一つしかない県立

図書館の恩恵を,少しでも全県下におよぼそうとすれ

ば,必然的にどの分館にも専任の県職員を常置して,図

書館奉仕の強化をはかることが大切である。

 6) その他,分館活動活発化に対する施策を検討のう

   え,実行可能なものについて早急に対処すること


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