高等学校における生徒の能力・適正,進路志望等に対応した教育内容,指導方法等の研究開発について-014/82page

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うに,高度の水準に達した基礎学力を有する,選抜された少数者を教育するときにのみ期待できることであり,現在の高等学校に与えられた,普通教育をすべての青年にほどこす目的からみて,進級制度を基礎とする学年制は廃止した方がよい。

高等学校の修業年限は,学校教育法第46条に,全日制が3年,定時制,通信制については4年以上と定められているが,これは修業年限の下限を示すものであって,上限については特に定めていない。

多くの高等学校が,原級留置を内規として定め,また,福島県立高等学校学則が,退学後1年以内の再入学や,1年以内の休学を認めていることから,上限は5年とするのが妥当と患われる。

修業年限を3年とすることを原則としなからも,生徒の学習状況によっては,卒業に必要な教科・科目の履修を,2年次までにおえることができるような,教育課程の編成が望ましい。大学入学資格検定試験が,満18歳に達しなくとも,合格を認め,18歳に達した後に大学受験資格を与える制度との調和を図るべきであろう。

一方において,3年間に卒業の条件を満たすだけの単位の修得ができない生徒には,さらに学習を続けることができる時間の保障が必要となる。

単位修得の認定を,履修時間と学習内容の両面から倹約していくことによって,高等学校教育の内容が貧的に高まり,生徒たちにも,真の意味の学習意欲か喚起されるであろう。

現在のような,進級,卒業の,認定では,能力の有無にかかわらず,いわゆる「やる気」を起させるようなふん囲気が生まれる可能性は少ない。両校在学中に,大学程度の学習を可能にするような制度(APP)も考慮すべきであろうし,中学校程度の内容を反復指導するグループが存在してもよい。

高等学校卒業の意味は,共通の教育内容を修得したということではなく,高校で学んだ内容は,生徒ひとりひとりによって異なっているが,能力・適性に応じて,卒業後も自主的に学習を,継続する方法を身につけたということにある。

6) 各教科以外の教育活動

大学受験準備を具体的目標とした知識偏重の教育によって,高等学校教育が,特に普通科高校の教育活動がゆがめられているといわれるが,確かに,各教科を専門とする高校教師は,教科学者の指導にのみ専念し,教科以外の授業についての研究は十分でない。

ホームルーム,クラブ,生徒会,学校行事において,指導の効果をあげることは,教師と生徒の人間関係を総合的に改善し,学校を魅力ある場にするのに大いに役立っであろう。各教科の学習にあてる時数を大幅に減ずることによって生ずる余裕を,これらの活動にあて,特に,午後は座学をはなれて,各教科の実習や体験学習と,各教科以外の学習にあて,教師と生徒とが教室の外で接触する時間とし,生徒理解につとめることが望ましい。

社会生活をするうえで必要な徳目や,総合的な判断力の育成を図るにあたって,現在の高校教師は無力であるような感じがする。たとえば,生徒が相談相手として教師を選ばないとか,非行が続発する等の問題について,すべての教師が教科指導のベテランであり,同時に,生徒指導の権威でもあるような,態勢を作り上げなければならない。

今後の高等学校教育の中で,各教科以外の教育活動の占める割合は,教科学習において選択制が大幅に取り入れられるにしたがって,ますます大きくなるであろう。

(2) 指導方法

―20ページ図表参照 その2(指導方法)

高等学校教育の問題を解決するには,制度と内容の両面からの改善が考えられるが,10度の改善はしばらくおいて,教育内容(特に,各教科・科目の内容の構成)の改善が,目下の急務となって


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