高等学校における生徒の能力・適正,進路志望等に対応した教育内容,指導方法等の研究開発について-016/82page
って懸念されるのは,目的意識のない,動機づけを欠く生徒たちが,自己の学習の方向をいかにして定めるかということであり,このような生徒たちに適切な助言を与え指導することが,高等学校教育の基本的姿勢として確立されなければならないであろう。カウンセラーの有資格者はもちろんのことなから,ホームルーム担任,クラブ顧問,その他すべての教師が,生徒指導の意味を正しく理解し,共通理解のもとに指導に当たらなければならない。
16歳から18歳という,心身ともに急激に成長,進歩し,変化していく青年たち,そのうえ,小学校,中学校で9年間の学者を通して,さまざまな学力を身につけた青年たちを,学校にひきつけるためには,卒業後の職業生活あるいは大学生活との関連において,ひとりひとりの生徒が納得できる形の学書を,学校生活のすべての分野で展開することか大切である。
生徒指導が,高い立場から生徒を見おろす指導ではなく,生徒と同じレベルで話し合える心理的環境を作ることを土台として,始められるのは当然であり,それには,生徒に年齢を意識させない若さが教師に求められるであろうし,少なくとも,生徒の生活を理解するだけの余裕が必要であろう。
このような努力を通して,生徒の教師に対する親近感も高まり,いわゆる人間化した学校の誕生も期待されるのである。
3) 進路指導
進路指導の与える印象も,就職あっせんの域から一歩も出ず,普通科高校では,進学指導係が,陽のあたる場所におかれ,就職係は肩身のせまいおもいをしている。
普通科高校で,最も欠けているのは進路指導についての正しい認識であるといわれている。国民教育といわれる高等学校教育が,生徒の卒業後の進路を考えるのに費やしているエネルギーは,教育活動全体の中で,わずかなものである。
大学進学希望老のための進路指導は,単にテストの序列による選別だけであり,就職あっせんも求人数に対して,不公平にならないよう生徒を配分する程度にとどまり,職業教育を主とする学校においてさえ,各生徒の将来について,生きがいのある生活設計などについて,自信をもって相談をうけ助言するような例は少ない。
キャリア・ガイダンスとか,キャリア・エジュケーションの重要性が強調されるのは,現状からみてもっともなことであり,ある学校を出れば,その学校の卒業生に見合った生活が保障されるというような,安易な進路指導は前近代的というべきであろう。
高度経済成長は反省期にはいり,産業の発展に進路指導が追随する時代はおわった。生徒自身も家族も,中学校を卒業した時点で,進路を決定するのは容易なことではない。進路の選択をできるだけ遅らせるのが世界的傾向でもあり,高等学校の3年間を,進路決定の準備期間とみなし,教科・科目の編成に総合的な職業の基礎に関する科目(かりに「生活」とよぶ)を設ける意義もここにある。
現在の高校生の進路は,テストの結果によって決定されるという批判は,必ずしも,的はずれとはいいきれない。進学,就職のいずれの場合も,進学する場合は,大学学部の決定に,就職する場合は,職場の決定に利用されるのが,教科学習の成績であり,模擬テストの順位なのである。
普通高校における大学進学希望者の増加は事実であるが,大学に進学することの意義を十分に認識している高校生の数は多くはない。勉強はしたくないが,大学には進学したいという高校生が多く存在することは,すでに述べた通りであるが,このような学歴社会の生み出したひずみを是正するには,高校卒業者や大学卒業者の,社会に出た後の職業生活について,体験的に認識を深め,生徒が自己の能力に適した生きがいを見出すことの