高等学校における生徒の能力・適正,進路志望等に対応した教育内容,指導方法等の研究開発について-025/82page
3) 職業教育の立場から
職業教育の今日的意味は,既存の職業に必要な基礎的技能を与えることでもなければ,またどんな職業にも共通に必要とされる労働観,職業観を与えることでもない。人間にとって職業労働はいかなる意味をもっているのかについて体験的に認識を深めさせることであろう。
そういう意味では,生徒の職業観,労働観の形成の問題を避けて通ることができず,それは職業科,普通科の別なく必要なことなのであるとすれば,高校の教育内容として,基礎教育を重視する一方,生徒の能力・適性・将来の社会的,職業的生活を配慮して分化・専門化した多様なプログラムも用意しなければならないはずである。
国語科教育としては,言語文化的要素を多くもった内容とするのではなく,将来の職業生活を考慮したプログラムが基礎のうえに設計されてもよいように思う。
たとえば,日常の応接の会話,意思伝達の正しい方法,読書への関心をたかめる内容等,さまざまなプログラムを用意すべきではないだろうか。
4) 人間教育の立場から
教育は,人間の素朴な子孫への願い,生きぬいていくために与えておきたい経験のすべての伝達,これを直接的に土台にすえるべきである,ということが人間教育の意味であろう。教育の究極目的は人格の完成であり,その内容は,知識(科学)・技術・情操(主として芸術)・意志(道徳的心情)・健康・霊性を統一的に発達させることであり,その意味において教育課程は,知・情・意・体・霊の調和的発達を目指し,知育,徳育,情操教育,体育などの関連をはかる必要がある。
このような観点から,国語科教育は他教科との関連の中で,調和のとれた人間育成をめざすものでなければならないということがいえるのである。
(4) 新しい視点
1) 小,中,高をつらぬく目標
国語科は,すべての教科の基本であり,国民生活をしていくうえでも基本になるものである。
そういう観点から考えれば,学校教育に定められた「日常生活に必要な国語を,正しく理解し,使用する能力を養う。」という条項は,今後も教科目標の大きな柱となるであろう。
その日常生活に必要な国語を具体的なものとしてはどうおさえるかということが教育課程編成にあたっての国語科目標設定のポイントになるであろう。
1 生活に必要な国語の基本的能力を育てる。
2 国民として共通に必要な能力を育てる。
(1) 日常生活に必要な国語の基礎的能力を育てる。
(2) 職業生活に必要な国語の能力を育てる。
(3) 人間としての生活に必要な国語の能力を育てる。
(4) 自己実現のために必要な国語の能力を育てる。
3 個人それぞれにとって必要な能力を育てる。
(1) 個性をのばしていくために必要な国語の能力を育てる。
(2) 能力に応じて学習していくために必要な国語の能力を育てる。
2) 高等学校としての目標
「生活に必要な国語の基礎的能力を育てる」ことは,小,中,高を貫く目標であるから,まず全体目標としてあげ,それを土台とすべきであろう。
具体的には,中学校とのつながりを考えていくために,